「イベントレポ」『キングメーカー 大統領を作った男』小説家・真山仁さん「このまま大統領選に出れば!」とソル・ギョングを絶賛!公開記念トークイベント開催 苛烈な大統領選を描くポリティカル・サスペンスの真骨頂!


続いて松崎さんが劇中のセリフを挙げ、「アリストテレスの〝正義こそが社会の秩序だ“。対してその師匠のプラトンの〝正しい目的のためなら手段は不問だ”。この二つの言葉は、本作のテーマをすごく良くついていると思うのですが」と問うと、真山さんは「政治家の人は必ず大義や正義を口にする。ウソではないのだが、そのために手段を選ぶか選ばないかで勝ち負けがでる。政治に善悪はなく、勝ち負けしかない、と取材時によく聞きますが、その大義を手にするためには、まず政治家になることが大事なんだ、となるんです。間違ってはいないのだけど、有権者の立場から考えるとどうかと思いますよね」と答え、「マックス・ウェーバーの著書には、政治は暴力だ。暴力を管理するために政治家がいる、とあります。多くの人は民主主義が政治だと思っているけれど、民主主義は暴力を鎮圧したあとにしかできない。この作品を見ているとよくわかります」と解説。

松崎さんが「善悪が灰色で、より黒でなければ選挙のためにはいいのではないか、ということかもしれませんが、実際の韓国大統領選や大統領になった人たちの人生を見ると、因果応報というか、真っ当に人生を終わった方がいない」と指摘すると、「だいたい逮捕されるか、自殺するか、あるいは暗殺されるか。実際、この間退任したばかりの文在寅さんを除くと、金大中さんだけが大統領になって逮捕されていない。でも実は過去に拉致されて、その後死刑判決も受けているので、ある意味全員国家権力に拘束されている。それだけ、韓国における大統領の権力がすごいということ」と韓国で取材も行っている真山さんから本作の背景にかかわる色々な解説が続いた。


また、本作でイ・ソンギュンが演じた「影」といわれ表には出ない選挙参謀については、「日本にも選挙プロデューサー業をやっている人はいます。まさにああいう存在で、自分が担ぐ人のために人もお金も用意するが、自分は下がって栄光を手にしない、影の存在がプロデューサー」と真山さん。「でも人って成功すると俺がやった、っていいたくなるところ。劇中それを殺して自分の夢を託した彼(チャンデ)はがんばっていたと思う。しかし人間の欲望として、いや俺のおかげだろう、手を汚さないボスはずるい人と思い始めるもの。イ・ソンギュンはその「影」の存在である人間の機微をものすごく上手く演じていたと思う。見ていると気の毒で気の毒で仕方がなかった (笑)」とすっかり感情移入したそうだ。
一方、ソル・ギョングについては、これまでも力道山から殺人鬼まで幅広い役柄を演じてきた名優だが、松崎さんからの「大統領の風格が見えたのがすごい」という言葉を受け、真山さんも「政治家って言葉は信用できないのに、なぜかこの人が演説をすると信じてしまう、というのがあるのですが、それを全部出してました。ひとたび民衆の前に立って発言すると人を惹きつける。このまま大統領選に出ればいいのに!」と絶賛。さらに「これまでの彼の出演作では、あまり知的な役柄のイメージがなくて、自分の感性と本能で生きる人だったが、ここまで懐の深い得体の知れなさを出せるというのは…この人は本当に怪物です!」と俳優ソル・ギョングの凄さで盛り上がった。

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2022.08.14