ふさわしい品格
一つは、イ・サンという役の特異性だ。
すでに、イ・ソジンが主役に扮した傑作時代劇『イ・サン』によって、イ・サンは細かくドラマで描かれている。視聴する人はどうしても、イ・ソジンとジュノを比較してしまう。そこがジュノにとってプレッシャーがかかるところなのだが、彼はあえて先入観をなくして新しいイ・サンの人物像を築き上げた。
もう一つは、イ・サンが朝鮮王朝時代後期の名君として今でも韓国で尊敬を集める点だ。演じる対象が偉大すぎて、俳優が気後れすることも大いにありうる。
しかし、ジュノはその点でも問題をクリアしている。彼が演じるイ・サンは品が良く、所作も堂々としている。まさに歴史的な名君の若い日を演じるのにジュノはふさわしい品格を備えていた。
それだけに、最後までジュノがイ・サンを立派に演じてくれることだろう。
なお、イ・セヨンが演じているソン・ドクイムは、史実では後にイ・サンの側室になる宜嬪(ウィビン)・成(ソン)氏のことだ。
そのあたりを注目しながら見ると、『赤い袖先』を歴史的にも興味深く見ることができるだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)