Netflix(韓国JTBC)で配信されている『私の解放日誌』で抜群の存在感を残した俳優ソン・ソックは今最も旬な俳優だ。ソン・ソックは俳優のほかに会社社長という別の顔も持っている。彼の異色な経歴を見てみよう。
底知れない魅力を秘めた俳優
『私の解放日誌』でソウル郊外に住む三兄妹の隣人ク氏を演じたソン・ソック。ミステリアスなク氏はドラマ序盤から妙な異彩を放っていた。紛れもなくこの人物がドラマのキーマンなのだろうというのは一話からほぼ予想がつく。
ドラマが最終回を迎えてもク氏の一挙手一投足について考察が続いている点は非常に興味深い。視聴者に解釈を委ねるような結末だったせいもあるだろうが、ドラマが終わってもなお余韻を残す俳優はそう多くはいない。
これまでも多くの作品で印象を残してきたソン・ソック。『私の解放日誌』で演じたク氏のようにソン・ソック自身も実に謎めいた人物のようだ。ソン・ソックは中学時代アメリカに早期留学した後シカゴ芸術大学で美術の授業を学んだが、自分には合わないと感じ映画専攻に転向した。
兵役については韓国ではなくイラクの部隊を志願し兵役義務を果たしたという。これだけでもすでに異彩を放っているのだがソン・ソックの異色な経歴はこれだけではない。
兵役後、カナダに渡った彼はバスケットボール選手を夢見るが挫折する。もともとドキュメンタリー監督になることが夢だったソン・ソックは演技にも興味があり、カナダで演技の勉強をしたのち韓国に戻ることになる。
その後、男性主人公と美術監督を務めた演劇『愛が燃える』をきっかけに映画『センス8』にキャスティングされデビューを果たす。海外作品のリメイクとの縁が多くこれまでも日本、アメリカ、イギリスで制作されたリメイク作品に多数出演している。
ソン・ソックは父親の会社を受け継ぎ企業の代表理事という別の顔を持つ。彼の会社は大田広域市に位置する機械の部品製造業だ。アメリカ、カナダ、日本など10数か国に製品を輸出し、2021年推定売上高は約26億8000万ウォン(約2億8000万円)だと明らかになっている。2022年現在は俳優の仕事があまりにも忙しくなったため専門の経営者を置いて自らは大株主に退いているという。
一方、ソン・ソックについてのマイナスな記事が浮上した過去もある。学生時代のイジメ疑惑もそうだが、印象に残っているのは「演劇観覧態度論争」と呼ばれた出来事である。親しい俳優の舞台を観覧した際のソン・ソックらの態度が悪かったとSNSで批判されたのだ。
ソン・ソック以外の俳優はすぐに自身のSNSに謝罪文を掲載したがソン・ソックはそうではなかった。謝罪というより、むしろ間違った方向に議論が進んでいかないよう自身の考えを正々堂々と伝えたのだ。『私の解放日誌』のク氏にリンクするようにソン・ソック自身もむやみに媚びない人物なのかもしれない。
もう一つ個人的にソン・ソックの胸キュンエピソードがある。最近のバラエティ番組で明らかになったことだが、ソン・ソックはどうやらお酒があまり得意ではないらしい。あんなにお酒の瓶を並べていたク氏はどこへ?と思ってしまう。アルコール依存症は完璧な演技だったようだ。それを知ってしまうとますます彼のことが知りたくなる。底知れない魅力を秘めた俳優ソン・ソックにはいったい幾つの顔があるのだろうか。
文=朋 道佳(とも みちか)
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コラム提供:ロコレ