「コラム」康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.208「『社内お見合い』爆走中!」

アン・ヒョソプとキム・セジョンが主演している『社内お見合い』が人気を集めている。ドタバタ風の強烈なラブコメなのだが、理屈抜きで底抜けに笑えるところが今の時代にピッタリなのだ。

画像提供=韓国SBS

問答無用に面白い

ドラマの冒頭から、キム・セジョンが演じるシン・ハリは、身分がバレないように逃げ回っている。
その逃亡シーンは、完全にドタバタで、通り過ぎる人をねこそぎひっくり返していくような騒動を巻き起こす。
とにかく、理屈はいらない。「ドラマとしてありえない」と深刻に考えることもない。キム・セジョンが恐怖におののきながらひたすら逃げ回っている姿は、問答無用に面白い。今の時代、こんなに笑えることは滅多にない。そういう意味でも、本当にありがたいドラマが『社内お見合い』なのである。
食品会社に勤めるシン・ハリが逃げ回っている根本は、財閥令嬢の友人のお見合いに代理で出てしまったことだ。
そのお見合いの相手は、こともあろうにシン・ハリの会社の社長だった。それが、アン・ヒョソプが演じたカン・テムだ。
彼も創業者の祖父のしつこい「結婚せよ」命令によって、1日に10回もお見合いをさせられる境遇だった。
そんなことに嫌気がさして、ようやく結婚を決意したのに、相手の女性はただの身代わりだった。それがシン・ハリであり、彼女は社長のカン・テムと社内で鉢合わせする度に、社員であることがバレないように逃げ回る羽目になったのだ。

痛快なラブコメ

こういう冒頭の部分から突き抜けるような笑いをふりまいていくのが『社内お見合い』の真骨頂だ。
ストーリー自体は本当にベタな展開。お見合いの身代わりとか契約結婚とか、今まで古今東西のラブコメでよく使われてきた題材がそのまま出てくる。
それでも、『社内お見合い』が独自性を持っているのは、やはりキム・セジョンの怪演のおかげだ。
表情といい動作と言い、キム・セジョンは何かにとりつかれたかのようなアクションを頻発させる。
その強烈な個性が『社内お見合い』というドラマをラブコメの痛快な異端児にさせてくれる。
もちろん、アン・ヒョソプの強烈なナルシストぶりもいい。
彼は本来とても恥ずかしがり屋の性格なのだが、俳優としてスイッチが入ると、自分とはまったく別人格の男を陶酔しきって演じてくれる。
かくして、『社内お見合い』は「どこまで行くのがわからない展開」で最後まで突き抜けていくことだろう。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

2022.03.26