四度の人生
苦悩がない人はいない。
みんな、それぞれに悩みながら毎日を必死に生きている。
それは、言ってみれば、胸に剣が刺さったままと同じ状態ではないのか。ただ、その剣は見えていない。
そうであるならば、その剣を見える人を探すのもまた人生の目的である。
そして、どんな人であれ後ろから死神に追われていることには違いがない。「死」は避けられないものであり、人間は早かれ遅かれ「生の世界」から「死の世界に」に移っていかなければならない。
こうしてみると、『トッケビ』の究極のテーマは、「生」と「死」が交差する世界でどう生きるか、ということであろう。
劇中で「人間は生まれ変わって四度の人生を経験する」ということが描かれる。一度目は種を植え、二度目は水をやり、三度目に収穫して、四度目に食べる……。
人間が四度の人生を経験するならば、果たして自分は何度目の人生を歩んでいるのだろうか。
そう考えてみるのも、『トッケビ』というドラマがあったおかげだ。人間にとって最も根源的なことを描いている。
究極的に言えば、コン・ユが演じるキム・シンも、イ・ドンウクが扮する死神も、キム・ゴウンが演じるウンタクも、私たちを取り巻く「生」と「死」をくっきりとした形で見せてくれる人たちなのだ。
異なる世界に生きているように見えて、実は私たちのすぐそばにいる人たちの分身なのかもしれない。
そう考えると、神秘の世界が現実味を帯びてくる。
美しい映像と俳優たちの演技に魅せられながら、『トッケビ』が描く「空想と神秘の世界」を堪能できるのは、幸せなことだ。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
提供:ロコレhttp://syukakusha.com/
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