【韓国映画特集】キム・ナムギルの俳優魂が『殺人者の記憶法』でどう変わるか

登場の仕方に意表をつかれる
『殺人者の記憶法』では、ミン・テジュが最初に登場する場面が印象的だった。
ソル・ギョングが演じるビョンスはずっと以前に殺人鬼であった記憶が生々しく残っている男だ。しかし、彼はアルツハイマーになり、身近な記憶をなくしていく。そんな彼が交差点で前の車に追突してしまう。
その衝撃で前の車のトランクが開き、入っていたバッグから血が流れていた。ビョンスは人間の死体がバッグに入っていると直感し、運転手の様子をうかがう。
しかし、運転手がなかなか出てこない。ビョンスの頭の中で疑惑が大いにふくらんだときに、ようやく運転手が現れた。
それが、キム・ナムギルが演じるミン・テジュだった。
ハンサムな顔だちと穏やかな話し声……。
車を追突されて感情を吐き出してもいい場面なのに、ミン・テジュは冷静で感情を押し殺している。ビョンスが「殺人者では?」と疑っている場面だけに、観客はどんな怪しい人物が運転手として現れるかと思っていたら、意表をつくように、端正な美男子が登場したのだ。


そのときのキム・ナムギルの演技が秀逸だ。適役として他のどんな俳優も思い浮かばないほど、キム・ナムギルは自然な演技で、ソル・ギョングの激しい感情を凝縮させた演技に応えていた。
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