仁顕王后が初めて
粛宗がこう語った。
「最初は奸臣たちにそそのかされて間違って処分してしまったが、ようやく本当のことを悟った。恋しくてもどかしい気持ちは時間が経つごとに深くなり、夢で会えばそなたが余の服をつかんで涙を流していた。起きてからそのことを考えれば、一日がむなしいばかりだった。そのときの心境をどうやってそなたが知るというのか」
かなり言い訳がましいが、粛宗の弁明はさらに続く。
「昔の縁を再び結ぼうとしたのだが、国家に関わることを処置するのは簡単ではない。辛抱して5年が経ったが、ようやく凶悪な者たちを処分することができたので、そなたをこうして迎えることができるようになった」
まわりくどい言い方をしながらも、粛宗は仁顕王后を再び王妃に戻す喜びを素直に語った。
それまでに廃妃になった王妃は何人もいたが、再び王宮に戻ってこられたのは仁顕王后が初めてである。まさに人徳の賜物だが、その一方で、人徳のない張禧嬪は王妃の座を明け渡さなければならなくなった。
張禧嬪の側室への降格にともなって、兄の張希載は済州島(チェジュド)に流罪となった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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