尹元衡(ユン・ウォニョン)/朝鮮王朝人物紀行13

 

あまりに多くの恨みを買った
事件の発端は、都の南にあった良才駅で政権批判の張り紙(壁書)が発見されたことだった。そこには、「上では女王が、下では奸臣が権力を占めているから国が滅びてしまう」ということが書かれてあった。
尹元衡は政敵の仕業であると捏造し、「女王」と名指しされた文定王后の指示をあおぎながら、この張り紙を大問題に仕立てあげた。
その結果、尹元衡の政敵はことごとく排除されてしまった。

こうなると、尹元衡の横暴ぶりも限界がなくなる。姉の文定王后が「陰の女帝」として君臨していることを利用して、尹元衡はあまりにひどい賄賂政治を続けた。
さらには、鄭蘭貞と共謀して妻を毒殺し、新たに鄭蘭貞を正妻に迎えた。
ただし、尹元衡が権力をつかんだと言っても、それは姉の威光があったからだ。姉の文定王后が1565年に世を去ると、一気に尹元衡は奈落に落ちた。今までの悪行が次々に暴露されたのだ。

処刑されるのを恐れて、尹元衡と鄭蘭貞は逃亡した。地方で息をひそめて暮らしたが、最後は2人とも自決している。あまりに多くの恨みを買いすぎていて、結局は自ら命を絶たざるをえなくなったのだ。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

コラム提供:チャレソ
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2019.09.30