好奇心を刺激してくれる
昭顕は16代王・仁祖(インジョ)の長男で世子(セジャ/王の後継者)に決まっていたが、1636年に朝鮮王朝が清に攻められて屈伏したとき、人質として清に連れ去られている。
その清で開化思想に触れて世界的視野を持った点がイ・ビョンフン監督も気に入ったようだが、最終的には昭顕を主人公にすることを見送っている。それは、彼が最後に悲劇的な死に方をするからだった。
これでは希望が持てるドラマをつくれないと感じたイ・ビョンフン監督は、さらなる検討を重ねた結果、歴史の中で埋もれていた淑嬪(スクピン)・崔氏(チェシ)を選び出し、明るく力強く生きる女性の王宮一代記として『トンイ』を制作した。
この『トンイ』が世に出た意義は大きい。なぜなら、『イ・サン』と連動することによって、朝鮮王朝時代の17世紀後半から18世紀末までの100数十年の歴史が網羅できたのである。
すなわち、粛宗(スクチョン)から英祖(ヨンジョ)、正祖に至る名君の系譜を理解しやすくなった。
ドラマはフィクションとはいえ、根底にある歴史的部分は事実である。当時の人たちがどう生きたか、ということは興味深い。その点でもイ・ビョンフン監督の作品は、好奇心を大いに刺激してくれる。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
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