「コラム」連載 康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.71「時代劇の傑作『王女の男』」

韓国の人たちは本当にテレビドラマが好きだと思う。知人の自宅に招待されると、その家の方々がドラマに釘付けになっているし、駅の待合室に置かれたテレビの前にも大勢の人が集まって熱心にドラマを見ている。これだけファンが多いから、韓国では年間にあれほどの数の作品が制作されるのであろう。

ドラマは「挑戦」の連続

韓国の数多いドラマの中でジャンルとして特に人気を集めているのが時代劇だ。日本では時代劇の制作本数が減る一方だが、韓国では着実に時代劇が作られている。
私も数多くの時代劇を見てきたが、今でも真っ先に思い出すのは『王女の男』だ。
これほど優れた時代劇を作ってくれた制作陣に感謝したい。
とにかく、このドラマは「挑戦」の連続だった。
野史に残る歴史的逸話の活用、架空の主人公の設定、最新映像機器の導入、オペラのような音楽構成……など、一つ一つ挙げていけばきりがないほど、『王女の男』は困難な試みに挑戦していた。

その中でも特筆すべきは、現代的なセンスに満ちていたということだ。
現代人が見る以上は、過去の歴史を扱う時代劇といえども現代的な視点が欠かせないのは必然だろう。
特に、めまぐるしく社会が変わる韓国では、時代劇の描き方が旧態依然としていると、すぐに視聴者から飽きられしまう。それだけに、各テレビ局も現代の韓国社会に合う時代劇を放送しようと躍起になっている。
そうなると、一部の視聴者から「歴史を歪曲している」という批判がかならず起こってくるのだが……。

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2019.05.18