「コラム」韓国のビックリ/追記編20「酒の飲み方」

 

怖い酒の話
「夢に臭いが付いているのか」
そう思った瞬間に目が覚めると、ドーベルマンのような猛犬がまさに私に襲いかかろうとしていた。
その犬を誘導しているのが銃を持った兵士だった。それも数人。私は猛犬と屈強な男たちに囲まれていた。

本当に恐ろしかった。一瞬で酔いが覚めた。
「何をしている?」
若い兵士の鋭い声が飛んだ。
何をしているも何も、酒に酔って海岸で寝入っていただけだ。
<それのどこが悪い? とにかく、命だけはお助けください>
私は猛犬を避けながら、必死にそう思った。

兵士たちの銃が闇の中で不気味に光っていた。
「ここは夜間立ち入り禁止だ。そんなことも知らんのか」
兵士にきつい口調で言われた。
彼らの説明によると、北朝鮮の兵士の侵入を防ぐために夜間の海岸は完全な立ち入り禁止になっているそうだ。

うかつにも知らなかった。私はとにかく「怪しい者ではありません。日本から来た、ただの酔っぱらいです」ということを説明して、逃げるように民宿に戻っていた。まさに「脱兎のごとく」である。
あんなに怖い思いをした酒は他になかった。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

コラム提供:ロコレ
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康熙奉(カン・ヒボン)著『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』(実業之日本社)

 

康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』

 

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