『雲が描いた月明り』は時代劇として画期的な作品だった。史実とファンタジーが見事に融合していたからだ。しかも、朝鮮王朝を揺るがした出来事が物語の中に巧みに組み込まれていた。特筆すべきは、イ・ヨンこと孝明世子(ヒョミョンセジャ)をパク・ボゴムが演じたことだった。
魅惑的なキャラクター
韓流が好きな人に「最近見た時代劇は?」と聞くと、一番多いのが『雲が描いた月明り』だった。
理由を尋ねるとパク・ボゴムの魅力を語る人が多かった。このドラマが韓国で放送されたのは2016年だ。しかし、いまだに日本で何度も放送されて、新しい視聴者を増やしている。それだけ魅力的なコンテンツなのだ。
この『雲が描いた月明り』はなぜあれほど大ヒットしたのか。様々な要因があるが、主人公のイ・ヨンをパク・ボゴムが演じたことが大きい。彼ほど伝統的な韓服が似合う若手俳優は他にいない、と思えるほど彼は劇中のキャラクターを魅惑的に見せていた。
そのキャラクターとは?
史実では、イ・ヨンこと孝明世子(ヒョミョンセジャ)は、1809年に生まれた。朝鮮王朝の数多い世子(セジャ/国王の正式な後継者)の中でもっとも聡明であったと言われている。
実際に父の23代王・純祖(スンジョ)の代理として政治を仕切って抜群の実績を挙げていた。
それだけに将来が嘱望されたのだが、惜しいことに、1830年に21歳で早世してしまった(孝明世子については『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』〔康熙奉(カン・ヒボン)著/実業之日本社発行〕で詳しく紹介されています)。
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『雲が描いた月明り』の時代1【主人公イ・ヨンのモデルとなった人物は?】