南半球を中心に世界中で盛り上がりを見せている2014年サッカーワールドカップ・ブラジル大会。
先日の日本対コートジボアール戦のテレビ中継は、瞬間最高視聴率が50%を超え、あの大ヒットドラマ「半沢直樹」の記録を更新した。
そして、「アジアの虎」というブライドを持ち、4年前の南アフリカ大会ではベスト16入りを達成した韓国も日本以上のサッカー熱気に包まれている。
ロシアを相手にする韓国代表の初戦は1対1の引き分けで終わり、日本人で初めて韓国代表のコーチを務めている池田誠剛氏の存在にも注目が集まっている。
韓国代表の長所と弱点を日本サッカー人ならではの客観的な目線で分析し、以前から韓国が得意としてきたフィジカルな部分を更に強化してくれることが期待されている訳だ。
今回のワールドカップ韓国代表チームの監督ホン・ミョンボ氏との厚い信頼関係を背景に史上初の日本人コーチとなった池田氏。2009年のU-20W杯からホン監督と仕事をするようになり、2012年のロンドンオリンピックでも当時銅メダルをかけて行われた「日韓戦」で韓国の勝利を裏で支えた人物として知られている。
当時韓国としては、サッカーではオリンピック初となるメダルがかかった試合で、その相手が日本ということもあって国中が異様な盛り上がりを見せていた。しかも、その日は、韓国の李明博元大統領が現職大統領として「竹島」(独島)に上陸して日本のメディアでも大きく取り上げられた日。まさに日韓のタブーを触る瞬間だった。政治がスポーツを利用した瞬間でもあった。
この政治的な問題を背景に両者の意地とプライドが激しくぶつかり合う死闘が繰り広げられ、勝利した韓国代表からは案の定、個人的な気持ちを露わにする選手が登場した。
試合終了の直後、MFのパク・ジョンウ選手が「独島(竹島)は我々の領土」と韓国語(ハングル)で書かれた横断幕を掲げ、勝利のパフォーマンスを敢行してしまったのだ。試合の翌日になると、日本と韓国はもちろんのこと、世界のメディアがこの場面を取り上げ、後日オリンピック委員会が調査に乗り出す事態にまで発展した。
オリンピックの規定には、「参加競技に歴史や政治的なイデオロギーは持ち込まない」ことが定められており、スポーツマンシップに反する行為であると指摘されたからだ。
しかしながら、選手も人間である以上、興奮真っ只中の瞬間には思わず本音(愛国心・ナショナリズム)が出てしまうこともあるだろう。とくに、中国や日本、ロシアやアメリカという大国に囲まれながら、過去に何度も侵略と支配を受けてきた韓国では、「愛国心」は国の存亡に関わる重要なメッセージとして人々の胸に深く刻まれている。
そのような歴史的な背景もあり、サッカーの国際試合にはキックオフ前に両国の国歌が流れるのだが、韓国の選手たちは国旗法に則って、右手を左胸に重ねながら真剣に聴かなければならないのだ。
では、池田誠剛コーチはあのロンドン五輪の日韓戦で韓国の国歌提唱にどう反応したのだろうか。
非常に敏感なところだが、本人は次のように語っている。
「後で試合のビデオを見返した時、僕だけ一体感がないことに違和感を覚えました。自分は日本人だから韓国人になる必要はないけれど、チームの勝利のためにベンチが乱れていたら勝てるわけがない、と。それに彼らのサッカーに対する真摯な姿勢は『人生賭けているな』と思えるものでした。それで僕はみんなと同じように国歌を聴くと決断しました。それから徐々に手を当てるようになったんです」
これでも日本の一部の人々からは、「売国奴」や「非国民」扱いをされ、心ない誹謗中傷を受けたこともある池田コーチだが、和を重んじる日本人らしい徹底したプロ意識がよく表れているコメントだ。
だが、これがもし逆の立場だったら、韓国人コーチは絶対に彼のような行動はとれないはず。まだまだ韓国には日本に対して劣等感や被害意識を持っている大勢の人がいて、政治はそれを上手く利用しており、スポーツと過去の歴史を切り離して考えることができていないからだ。
実際に、中国や日本に支配された経験を持つ韓国では、漢字から由来した韓国語の「売国奴」を使っているが、同じ言葉でも日本で使われている「売国奴」とはその度合が全然違う。
韓国の大衆が歴史の「トラウマ」を克服できない限り、そして日本の大衆がその「トラウマ」を理解できない限り、未来志向の日韓関係は真の意味で日の目を見ることはないだろう。
あらゆる分野においてデジタル化がさらに進んでいくこれからの時代、政治や外交としては永遠のタブーに残すしかない日韓の歴史問題や領土問題。大人の日韓関係には、池田氏のようなシンプルな割り切り方が求められるのかもしれない。
WOW!korea提供