Q.監督は、影響を受けた監督としてイ・チャンドン監督を挙げています。また以前、本作に関して、デビット・リンチの「ツインピークス」への憧れがあったとおっしゃられています。イ・チャンドン監督の『シークレット・サンシャイン』や「ツインピークス」からの影響はあったのでしょうか?また他にイメージした監督や作品はありますか?
『シークレット・サンシャイン』の持つ「許すことの二重性」「和解の二重性」など、私たちが普段当然視していることを、裏面から眺めるイ・チャンドン監督の視線が好きです。また「ツインピークス」の場合は、平和に見える田舎町がはらむ奇怪で恐怖に満ちたイメージが好きだったような気がします。他にも日本の漫画家・古谷実の「ヒミズ」という作品がとても好きです。『我は神なり』の絵柄や表現、雰囲気に多くの影響を受けたと思います。
Q.主要キャラクターの造型について、どのようにつくりあげていったのかお教えください。
当初の企画から、「真実を語る悪人」と「偽りを言う善人」の対決を描くのが目標でした。私たちはしばしば、ある人が真実を語っているにもかかわらず、その語っている人のイメージが自分の望むものと違っていたり、自分が認めることができない悪人であったりする時、彼の言葉を嘘と見なしてしまいます。逆に、言葉を語っている人が善人だという理由で、彼の話をすべて真実だと思ったりもします。これが、人が間違った信念を持つようになる重要な契機だと思いました。このことを宗教的なものに限らず、様々な事柄で見ていく中で、ストーリーを引っ張る主要キャラクター2人の設定が決まりました。
Q.キム・ミンチョル役のヤン・イクチュンの声優としての評価をお教えください。
ヤン・イクチュンはとても繊細な人です。そんな繊細な人が、キム・ミンチョルという会話がまったく通じない壁のような人物を演技することで、キム・ミンチョルのキャラクターがより複雑になり、深みを増したと思います。ヤン・イクチュンは、監督と声優という立場ではなく、共に映画を作った同僚のように感じています。
Q.監督自身の「信仰」についての考え方を聞かせて下さい。
私自身は、信仰についてそんなに深く考えてみたことがないので、何を申し上げていいかよく分からないですね。しかし言えるのは、私はほとんどすべてのことについて疑問を感じる人間だということです。
映画『我は神なり』は、10月21日(土)ユーロスペースほか全国順次公開。