ドラマ『トンイ』は日本でも大人気を博した。トンイを演じたハン・ヒョジュの魅力もあって、トンイがいかにも明るくて純粋な女性のように描かれていた。一方の張禧嬪は、朝鮮王朝3大悪女の1人に数えられて、悪女の代名詞になっている。しかし、本当の悪女はどちらだったのだろうか。
本当にトンイの毒殺はあったのか
ドラマ『トンイ』の主人公になっていたのは、19代王・粛宗(スクチョン)の側室だった淑嬪(スクピン)・崔(チェ)氏である。彼女はトンイという名前でドラマに登場する。
トンイと張禧嬪はお互いにライバル関係にあったのだが、朝鮮王朝の正式な歴史書である「朝鮮王朝実録」を丹念に読んでいくと、張禧嬪よりトンイのほうが悪女であったと思われる根拠がいくつもある。それを3つに整理してみよう。
1つ目の根拠。
側室から王妃になった張禧嬪だったが、1694年4月に王妃から側室に降格になっている。その理由になっているのは、「張禧嬪の兄である張希載(チャン・ヒジェ)がトンイを毒殺しようとしていた」という告発があったからである。この告発は宮中を揺るがす大事件に発展し、結果的に張希載は済州島(チェジュド)に流罪となった。その後、張禧嬪は王妃から側室に降格になっている。
すべては、トンイが毒殺されようとしていたという告発が根拠になったのだが、その告発に明確な証拠があったわけではない。ということは、偽りの告発だったとも想定できる。本当に、張希載がトンイを毒殺しようとしたのかどうか。
たとえトンイを毒殺したからといって、張禧嬪の側は何も有利になる状況ではなかっただけに、そういうたくらみをする可能性が低いと判断せざるを得ない。(ページ2に続く)