そんな3人の登場人物が一堂にステージ上で歌声を重ねるシーンもこの舞台のハイライトだ。幻想的なジョアンと不安定な存在であるシンクレアの歌が絡み合う中を、意思を持って彷徨っているようなユージン・キムの声。決してユニゾンにはならない3者の心の在り様が伝わる重要なシーンである。ソンジェの歌声は、心をボロボロにしても“生き続けること”を守らなければというシンクレアの強い意志とそれに付随する矛盾を感じさせる。歌われるのは5つの人格の中の誰でもなく、ひとつしかない身体の叫びのようにも聞こえた。
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