常に正祖の排除を画策
重臣たちが声を荒らげるのも無理はなかった。
正祖が亡くなったとき、その臨終の場に立ち会ったのは貞純王后だけということになる。これは大問題だった。
なぜなら、貞純王后が正祖の遺言を操作するかもしれないからだ。しかも、貞純王后は誰が見ても正祖の最大の政敵であったのだ。
貞純王后は正祖の父の思悼(サド)世子を死に追いやった張本人の1人であったし、正祖の即位をずっと阻もうとしていた。
本来なら正祖によって重罪に処せられる立場だったのだが、形式上は正祖の祖母であったために、かろうじて罪を逃れてきたのである。それでも懲(こ)りずに、常に正祖の排除を画策してきた。
そんな政敵が、あろうことか正祖を看取る立場になろうとは……。(ページ3に続く)