こんなこともありました。人間緊張すると普通の行動が取れないものだということを知りました。
行進しているとき、教官から怒鳴られると右足と右手が一緒に出る人がいました。普通足と手は交互に出るものですが、緊張のあまりそうなってしまったんですね。皆さんも試してみてください。
私ごとですが、行進のとき「回れ右」「回れ左」と瞬時に言われると、日本で育って後から韓国語を覚えた手前、体が反応せず、常に半テンポ遅れて動くので怒られました。背が小さくいつも後ろの方で行進していますので、自分一人違う方向に向かってしまったので怒鳴られました。みんなが右に行進しているのに自分だけ真っ直ぐ行進したり、反対方向に行っているのですから目立つわけです。それは私が決して運動神経が悪いわけではありません。決して。
私の韓国語能力がネイティブな人と違い、とっさに反応出来ず、号令されるとその命令が脳に行き、それから体に伝達されて行動を起こすわけですから、どうしても半テンポ遅れます。そこで私は「要領を本文とすべし」を思い起こし、それ以降私は列の後ろでなく中間に入り込み、「脳」で反応せずに大勢に身を任せ流れのまま行進したおかげで殴られることもなくなりました。
こんな話もあります。
一から六十まで号令をかけると何秒かかると思いますか。普通五十秒、早くて四十秒? いえいえそれでは収まりません。
当時一小隊は六十人でした。十時に点呼を受けます。まず全員揃っているか。次に持ち物を整理整頓しているか。鉄砲の手入れをキチンとしているか等を点呼するわけですが、三十人ずつ通路をはさんで向かい合い整列して点呼を待ちます。最初は左から力強く番号を発します。声が小さかったり噛んだりすると指揮棒が猛威をふるいます。五十秒でも四十秒でも満足しません。
では何秒だったら?
十秒です。そんな馬鹿なとおっしゃるかもしれませんが、それで収まらなかったら殴られ叩かれるのですよ。
パンツ一丁で立っていますから、そのしごきは肌に食い込みます。
ではどうしたら六十秒を十秒で連呼できるのか。最初の一の半分が出かかったときにはすでに二、三、四、五、六が出なければ不可能です。
もう一度言います。そんな馬鹿な、とおっしゃるかもしれませんが、「恐怖」は不可能を可能にします。
文=権 鎔大(ゴン ヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている? 』(著者/権鎔大 発行/駿河台出版社)
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