「コラム」トイレットペーパーは貴重品、あなたは本当に「韓国」を知っている?

<Wコラム>トイレットペーパーは貴重品、あなたは本当に「韓国」を知っている?

確か一九六七年ごろだったと思います。あるお金持ちの家に招待されて目を見張りました。

自動車のピストンを製造している会社の社長宅で、門構えも立派で庭には池もあり木が生い茂っていて日本でも入ったことのないような豪邸でした。そこの跡取りは当時韓国に三台しかないスポーツカーを所有していたほどでした。

ビックリしたのは、そのたたずまいではなく出された果物でした。お手伝いさんが持ってきたお皿にはバナナとみかん、それにスイカが載っていましたが、その出され方が日本と違っていたので驚いたのです。

バナナはきれいに皮がむかれ、一本そのままではなく、三、四切れにしてあり、みかんも一つひとつきれいに筋も取り除かれていました。一つのみかんをむいて一粒一粒きれいに並べるためにはどのぐらいの手間がかかったのでしょうか。当時の韓国では、バナナやみかんは大変貴重な果物だったのです。ちなみにスイカには塩ではなく砂糖がかけてありました。当時のスイカはまだ甘みが足りなかったのです。

つい先日ソウルに行き、スイカを食べましたが、何とおいしいことか、もちろん砂糖はふってありませんでした。

果物事情がそうであることはわかりましたが、応接間にトイレットペーパーが置いてあるのにも驚かされました。ただ無造作に置いてあるのではなく、きれいな刺繍を施した丸い布に包まれていました。トイレにおいてあるように真ん中を軸にして回しながら使うのではなく、真ん中の芯を取り、内側から使うようになっていたのです。紙の事情が良くなかった時代でしたから、トイレなどにもトイレットペーパーではなく新聞紙が切りそろえてありました(これは一般の家庭でのことです)。ふき方によってはいつの新聞を使ったのかお尻に残ってたりして……。


今でも地方のトイレに行くと、さすがに新聞紙は置いていませんが、その名残からかトイレットペーパーを捨てる箱が置いてあります。ソウルでもトイレにトイレットペーパーを入れる箱が置いてあり驚く日本の方も多いと思いますが、紙詰まりのなごりで置いてあります。昔はトイレが汚く、行くのが億劫でしたが、一九八八年のソウルオリンピックを境に公衆トイレがきれいになりました。公衆トイレの美化運動の一環でコンテストを行ったおかげで、高速道路のトイレも見違えるようにきれいになりました。

文=権鎔大(ゴンヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大発行/駿河台出版社)

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2017.01.30