韓国も二〇一六年から定年年齢が六十歳に延長されますが、定年後の過ごし方は人それぞれです。日本より見栄の社会である韓国は定年後にどんな仕事をすればメンツが保たれるか苦心します。私をはじめ韓国の大手航空会社の役員を定年退職した同僚を見ると、これといった職についていません。私は日本の中堅旅行会社の顧問として再就職しましたが、現役の韓国人の後輩から大手航空会社の役員経験者としてはその旅行社は小さすぎて格があわないと言われ、そんな私を訝りました、多少気の毒そうに。韓国にいる定年退職した同僚はほとんど中堅クラスの旅行社の役員職など見向きもせず、自分にふさわしいオファーがないのでブラブラしています。日本育ちの私が、格にこだわることなく実質的な判断で仕事をしているのも、そういうことを容認する日本の社会的雰囲気のおかげだと思います。恐らく見栄っ張りの韓国でしたら今の選択はできなかったかもしれません。
韓国社会では日本よりも人の目や面子をことのほか重要視し、それが自分自身を縛っているので、窮屈にならざるを得ません。けれども韓国を離れるとその体面から解放されます。
不思議なもので、アメリカに移民している高学歴で大手の企業の役員をしていた人でも、韓国では絶対「できない、しない」下積みの仕事をしているのは何を物語っているのでしょうか。社会的な雰囲気とは恐ろしいものです。韓国で気にしていた体面、面子にこだわらなくてもいい雰囲気がアメリカにあるからです。
韓国では列に割り込んだりする人でも、日本に来たらきちんと並び、交通規則を守るのですから恐れ入ります。 社会の雰囲気によって行動が変わるのですから昔習った「人間は社会的動物である」という言葉がピッタリきます。
文=権鎔大(ゴンヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大発行/駿河台出版社)
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