ユチョン(JYJ)の主演ドラマ「スリーデイズ」(原題)が高視聴率を出しているなか、彼の所属会社「C-JeSエンターテイメント」の大変身が話題になっている。
数年前、5人組の「東方神起」から脱退した3人組「JYJ」の獲得と共に設立され、日本でも「エイベックス」(avex)との法廷攻防戦で知名度を一気に高めた「C-JeS」だが、もはや役者専門の芸能事務所と言えるほどのラインナップを誇っているのだ。
確か、最近の韓国芸能界では、音楽系の芸能プロダクションの事業拡大が目立っている。得意とするアーティストやアイドルのマネージメントだけでなく、俳優と女優の育成・マネージメントやドラマの製作にまで手を広げ、「総合エンタ企業化」を図っている。
IT革命以降のパッケージ商品(CD・DVD)の収益激減を背景に、日本でもエイベックス(avex)やアミューズ、スターダストなどの会社が「総合エンタ企業化」を図って成功を収めているが、韓国でも同じような現象が起きつつある。
「SMエンタテインメント」、「YGエンターテインメント」、「JYPエンターテインメント」といった、既存の音楽系大手プロダクションだけでない。「JYJ」の所属する「C-JeSエンターテイメント」や「CNBLUE」と「FTISLAND」の所属する「FNCエンタテインメント」などの新興勢力も、「音楽ビジネス」の枠を超えた事業展開に積極的に加わっているのだ。
WEBコンテンツの中心がテキストから画像、そして動画に移り変わる中、音楽業界ではアイドルによる、いわば「見せる音楽」が主流になっている。
もはや、「歌」だけで芸能活動を続けることは厳しくなっており、一流アイドル・アーティストには、ドラマや映画はもちろん、バラエティー番組でも活躍できるマルチな才能が求められている。
このような時代の流れに歩調を合わせるべく、「東方神起」や「少女時代」などが所属する「SM」社は、2012年に「SM C &C」を設立し、 チャン・ドンゴン、キム・ハヌル、ハン・チェヨンなどの人気俳優たちを迎え入れている。
同時に、ドラマ「花ざかりの君たちへ」、「総理と私」(原題)、「ミス・コリア」(原題)といったテレビドラマの製作にも乗り出している。今後も年に1〜2作品を手がけていく方針だという。
「YGエンターテインメント」もこれに追随する形で、「最高の恋」のチャ・スンウォンに続き、先日は「冬のソナタ」の「ジウ姫」こと、チェ・ジウと契約を結んだ。
韓国版「花より男子」のク・ヘソン、「星から来たあなた」(原題)のユ・インナなどの若手から、イム・イェジン、チャン・ヒョンソンなどのベテラン俳優まで揃い、ラインナップに重みが増した形となった。
社長のヤン・ミンソク氏は、「始まったばかりの映像事業とのシナジー効果を発揮するためにも役者のマネージメントは必須。」と、映像コンテンツ事業への参入を公式に発表している。ちなみに、ヤン社長は、YGの創業者であり「ソテジ・ワ・アイドゥル(Seo Taiji&Boys)」のヤン・ヒョンソクの弟である。
「JYPエンターテインメント」においても状況は同じだ。
「2PM」のテギョンや「miss A」のスジ、「2AM」のスロンなど、所属アイドルグループのメンバーたちをドラマに積極的に出演させている。
さらに、パク・ジュヒョン、イ・ウンジョン、チェ・ウシクなどの若手俳優を抱えており、数年前にはヒットドラマ「ドリームハイ」の製作にも参加した。
また、子会社の「JYPピクチャーズ」からは、中国の大手プロダクションと組んで世界を視野にいれた映画製作にも乗り出すと発表されている。
一方、新興勢力の 「FNC」社も負けてはいない。
「CNBLUE」のチョン・ヨンファや「FTISLAND」のイ・ホンギなど、自社の人気アーティストを先頭に立て、俳優マネージメントのノウハウを培ってきた同社。最近は、「チュノ〜推奴〜」と「ミス・リプリー」のイ・ダヘや「ランラン18歳」と「パリの恋人」のイ・ドンゴンなどの有名俳優らを補強し、来年は韓国の「JASDAQ」と言われている「KOSDAQ」への上場を目指している模様だ。
「C-JeS」の話に戻ろう。「JYJ」メンバーたちの演技兼業はもちろん、映画「オールド・ボーイ」と「親切なクムジャさん」のチェ・ミンシク、「シルミド」と「力道山」のソル・ギョング、「イルマーレ」と「観相師−かんそうし−」のイ・ジョンジェ、「ウェルカム・トゥ・トンマッコル」のカン・ヘジョン、「弁護人」(原題)のクァク・ドウォンなど、韓国映画界を代表するムービースターたちを立て続けに獲得しているのだ。
そして、「JYJ」のジュンスをミュージカル俳優としてブレイクさせつつ、チョン・ソナなどミュージカル専門の女優とも契約を結ぶなど、「ミュージカル・ビジネス」までも自社のメイン事業の1つに育てる方向に舵を切っている。
エンタメ・コンテンツのグローバル化にともなって、このような事業拡大が進んでいるわけだが、その背景には、「総合エンタメ企業化」を図る音楽系芸能プロダクションと俳優たちの「ウィンウィン関係」が見え隠れする。
音楽系芸能プロダクションとしては、ドラマや映画界で影響を持つトップスターを迎え入れることで、自社アイドルの映画界などへの参入障壁を崩し、キャスティング力強化にも拍車がかかるというメリットがある。
また、K-POPブームですでに海外進出のインフラをしっかりと構築している音楽系芸能プロダクションのビジネス基盤は、海外展開を望む役者たちにとっても非常に魅力的な存在だ。
多くの役者たちが、まだ小規模な芸能事務所に所属していることを考えると、この流れはしばらく続きそうだ。
長年、「芸能ビジネスと水商売は紙一重」と言われて来たが、最近は数年間を成長し続けた芸能事務所が次々と上場を果たし、今では「安定株」として投資家にも支持されるようになった。そして、目指すは「総合エンタメ企業」というわけだ。
もしかすると、そう遠くない未来には、芸能プロダクション業界からもあの「ウォルト・ディズニー」のような、1世紀以上にわたり、人類を楽しませるマンモス企業が誕生するかもしれない。