◆ ストーリーに引き込んでしまう熱演
キム・ジュンスが演じたドリアンは、誰もが魅了されるような魅力を持った「花より美しい男」だ。
結局自身の魂と永遠な美しさを交換したドリアンは、徐々に堕落していく。良心を忘れたドリアンが化け物になるにつれて肖像画の魂も奇妙に変化して悲劇に向かって駆け抜ける。
キム・ジュンスは、血を吐くような熱演で観客は一瞬たりとも目をはなすことができない。清くて純粋だったドリアンが、理性を失っていく時は化け物に変わり、ベジルを誘惑しようとする時は色っぽい魅力が引き立った。
公演の終わりに行くほど、キム・ジュンスはいっそう悪に走って行く。遂にすべてが悲劇で終わった時にステージ上で絶叫しながら嗚咽するキム・ジュンスを見て客席は息を呑んだ。ひとりの人間が、愚かな欲望のために破滅していく過程をただキム・ジュンスひとりを通して感じることができた。
◆ 再度証明したその名前の価値
キム・ジュンスは 6日に城南(ソンナム)アートセンターオペラハウスで開催された記者懇談会で、「運がいいのか、タイトルロールを担当してうまくいった作品がいくつかあります。それで今回も負担と責任感と重圧感を持って舞台にたちます。創作ミュージカルなので自由で気楽な部分もありますが、ベースがないので難しかったです」と本音を明らかにした。
キム・ジュンスは、2010年に「ザ・ミュージカルアワード」の男優新人賞から始まって、毎回ミュージカルの授賞式でトロフィーを総なめした。彼がラインナップで名前をあげた作品は全席完売の連続で、観客と評壇の好評を博して「信じてみる」俳優に成長した。
そんな彼が、創作ミュージカルの主人公として再度その名声を確認させている。負担と責任感と重圧感は、いつのまにか消えて「狂った男」ドリアンだけが舞台の上にいた。「ドリアングレイ」は、ミュージカル俳優キム・ジュンスにとって「代表作」となると断言してもいいだろう。