8月4日で満29歳のチャン・グンソク。韓国では数えで年齢を示すので、本人には「いよいよ30代に入った」という自覚があるだろう。
大きな節目である。
10年前もそうだった。2006年の8月。数えで20代に入ったチャン・グンソクは、その夏には、秋から放送が始まる『ファン・ジニ』に備えていた。子役から芸歴を重ねた彼は、『ファン・ジニ』でハ・ジウォンを相手に純粋で激しい愛を演じきり、「大人の俳優」として一気に評価を高めた。
あれから10年。絶大な人気を博した『美男<イケメン>ですね』があれば、低視聴率で終わったドラマもあった。一喜一憂の20代だったといえるだろう。
そして、数えで30代を迎える今年……ドラマ『テバク』で本格派時代劇の堂々たる主役を演じた。
俳優を続ける理由
今年のチャン・グンソクは、印象的な言葉を何度も口にしている。
1月に『テバク』の主演が決まったときにはこう語った。
「2年間、大学院に通いながら、臥薪嘗胆の姿勢で自分を振り返ってきました」
この言葉からは、いかに忍従の生活を強いられていたかがわかる。
3月24日、『テバク』の制作発表会ではニコリともしないでこう語った。
「今までのものを捨てて、新しいものを身につける」
まるで過去と決別するようなセリフだった。それほどの覚悟で『テバク』に臨んだのである。
結果は、どうであったか。
韓国では、『テバク』の放送が6月14日に終わった。その直後にチャン・グンソクはこう述べている。
「作品を通して、私が一体なぜ俳優を続けているのかという理由を見つけ出すことができました」
意味が深すぎる。
この言葉だけでは、「『テバク』の出来に満足しているのか、そうではないのか」がよくわからない。
しかも、「俳優を続けていく理由を見つけた」と言っているが、その理由が何なのかを明かしていない。
道は二つに分かれる
結局、『テバク』が終わったあと、作品に対するチャン・グンソクの真意を知ることができなかった。
休む間もなく、彼はソウル、東京、大阪でコンサートをこなした。天性のエンターティナーとしてのエネルギーが、大都会の喧騒の中で炸裂した。
そして、「決断の真夏」を迎えた。
果たして、決めるべきことは何なのか。
差し迫ったことを言えば、兵役にいつ行くか、ということだ。
完全燃焼したと自覚できたドラマを直前に撮っていれば、何の憂いもなく兵役に行けるのかもしれない。しかし、『テバク』はそこまで完璧な作品ではなかった。
つまり、やり残したことがあるのだ。それこそが、「俳優を続けていく理由を見つけた」という言葉の真意ではないのか。
今後は二つの道に分かれる。
完全燃焼できる作品にもう一度チャレンジすることが一つ目の道。やり残したことがあるのは事実だが、兵役期間中に今までにない自分を見つけ、除隊後に改めて挑んでみるのが二つ目の道だ。
どちらを選ぶのか。
決断の真夏は、暑い暑い日々が続きそうだ。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康熙奉の講演会「朝鮮王朝の歴史と人物」はこちらです。
コラム提供:ロコレ
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