チャン・グンソクが主演した『テバク』で19代王・粛宗(スクチョン)を演じたチェ・ミンス。『トンイ』でのチ・ジニを初めとして、今まで多くの俳優が粛宗を演じているが、「チェ・ミンスの粛宗が最高!」という声が多い。それほど彼の演技は見る者を身震いさせた
鬼気迫る演技力
今年の上半期で一番話題になったドラマは『太陽の末裔』である。ソン・ジュンギとソン・ヘギョが共演したこのドラマが上半期で最高のドラマだった。
しかし、俳優にスポットを当てると、「上半期の最高はチェ・ミンス」という評価が圧倒的だ。
それほど、粛宗を演じたチェ・ミンスにはカリスマ性が宿っていた。
もっとはっきり言えば、他の俳優では真似ができない「神がかり的な鬼気迫る演技力」を持っていた。
そのチェ・ミンスは1962年に芸能一家の二世として生まれた。「タフガイ」というイメージを前面に出して俳優活動をしていた彼が大ブレークを果たしたのが、1995年の傑作ドラマ『砂時計』だった。
以後の彼は、個性派の大物俳優として一目置かれる存在感を放った。
同時に、数々の奇行でも知られた。
ひたすら山ごもり
とにかく、突飛な行動を取るのである。
数々の奇行の中でも特に思い出されるのが「不可解な山ごもり」だ。
それは、ペ・ヨンジュンが主演した『太王四神記』(2007年制作)で、チェ・ミンスが大長老という怪人を演じた後の出来事だった。
チェ・ミンスは忽然と姿を消してしまったのである。
ことの起こりは、2008年4月だった。チェ・ミンスはソウル市内で車を運転しているとき、ちょっとした行き違いで年配者に暴力をふるうという事件を起こしてしまった。公の場で土下座して謝罪した彼は、以後すべての俳優活動を自粛して山にこもり、ひたすら反省の日々を過ごした。
当初はほどなく復帰すると思われたのに、彼は山ごもりをやめず、ずっと1人で過ごしていた。
まるで仙人のような生活を続けたのである。
多くの人が説得に向かった。
「早く山から降りてきて、俳優に復帰してください」
みんながそう願ったのだが、チェ・ミンスは首を縦に振らなかった。
一筋縄でいかない「怪優」
1年半が過ぎた。
ようやくチェ・ミンスは2009年9月になって山を降り、家族と一緒に住むようになった。
帰ってきたとなれば、当然ながら出演依頼が殺到する。
彼のもとには様々な企画が持ち込まれたが、チェ・ミンスも地味な単発のドラマで復帰する道を選んだ。
韓国では、反省を示すときに山ごもりをすることはよくあるが、チェ・ミンスほど長期にわたる例はそれほどない。
この一例をもってしても、彼がいかに「変わっている」かがわかる。
以後のチェ・ミンスにも、トラブルが付きまとった。しかし、そうしたトラブルを、むしろ俳優業の経験に生かしているところがある。というのは、問題を起こすたびに演技に凄味が出ているのだ。
そういう意味でも、本当に一筋縄でいかない「怪優」である。今回の『テバク』でも、そんなチェ・ミンスの真骨頂がよく出ていた。
次はどんな作品に出演するのか。
あるいは、どんなトラブルに巻き込まれるのか。
チェ・ミンスは、ハラハラさせるような緊張感がある俳優である。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
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