「初めての悪役だったので、一層愛着がありますね。次も機会があれば、もう一度悪いキャラクターをやりたいです。」
韓国で5月に放送終了したドラマ「記憶」で、大企業の副社長シン・ヨンジンを演じた俳優イ・ギウが、これまで見せたものとは全く違う演技で新たなイメージを作り上げた。すらっとした背、優しそうな顔のおかげで、これまでは主に貴公子風のキャラクターにとどまっていた彼が、今作で初めて悪役を演じたのだった。
劇中、ヨンジンは周りの全ての人を自分の目的のために利用するような人物だ。生まれつき良い家庭で育ったいわゆる“ボンボン”だが、自分の好みによって人を利用して捨てる。一言でいえば、卑劣で偽善的なので愛層が尽きる人物だ。
イ・ギウは「初めはネットでの反応が良くなかったんですが、話が進むにつれて好評となり満足しています」と語った。
デビューして13年を迎えたイ・ギウは、俳優として変化の必要性を感じていたところに入ってきた悪役のオファーを断る理由がなかったという。彼はあえて悪口を言われるような悪役を引き受けず、いい役ばかり選んでも今の人気を維持することができる演技者だ。それにもかかわらず、悪役を自ら希望したのは、「記憶」のパク・チャンホン監督と脚本家のキム・ジウ氏に対する信頼が高かったというのだ。
「監督は僕がやりたいことを全て表現しろとおっしゃいました。今までのドラマの中で準備時間が一番多くありました。シン・ヨンジンという人物の分量は多くなかったですが、精神的にも投資をたくさんしました。監督もシン・ヨンジンに対する僕の意見を気にしていらしたようです。リハーサルの時、準備したものをお見せしたら、喜んでくださいました。僕はこれまで作品に臨むときに、脚本を書く脚本家の先生の邪魔にならないか聞くのを恐れているタイプでしたが、今回は伝えてみたらいいと言ってくださいました。今までこのような役はやったことがないので、自分でも新鮮でした。」
イ・ギウは、昨年の映画「ベテラン」でのユ・アイン、ことし初めのドラマ「リメンバー‐息子の戦争」でのナムグン・ミンが韓国の悪役旋風を巻き起こした後なので、プレッシャーが倍だったという。二人とは完全に違う姿を見せなければならないので、すごく悩んだようだ。
「悪役は常に挑戦してみたかったキャラクターでしたが、ユ・アインやナムグン・ミンさんの後だったので、プレッシャーが大きかったです。だけど視聴率を考えず、視聴者に良い記憶を残せたと思います。二人とは違う姿を見せるために研究もずいぶんしました。」
続けて「シン・ヨンジンは見かけはたくましくて成熟しているんですが、乳児期から抜け出せない未成熟な人物なんです。一言でいうと、精神的に育っていない体ばかり大きい子どもです。フィギュアを集めていて、野球のバットを大切にする“オタク”のような面があります。物理的に説明できずに大変なんですが、父親と一緒にいるシーンでは未熟に見えるよう頑張りました」と役作りの苦労を明かした。
イ・ギウは、悪役をこなした秘訣として周囲の人に助言を求めたことだと答えた。「親しい人に『僕が怖そうに見える時はいつ?』と聞いてみたんです。そしたら『おなかがすいた時』、『悔しいことがあった時』と言われました(笑)。そういったことをメモしておいて、そういう状況の時の自分の表情を注意深く見てみました」とし、「悪役が出てくる作品も探してみました。シン・ヨンジンというキャラクターを通じて、子どもよりも幼稚で恥知らずな姿を見せたかったですね」と強調した。
ドラマ「記憶」を終えたイ・ギウは、俳優として一層成熟していた。以前よりも作品や演技に対する態度が変わったという。
「いつの間にかデビューして10年以上の時が過ぎました。初めは演技者という職業に対して深く考えたことはなく、じっくり考えることもありませんでした(笑)。若いころは単純に好奇心が旺盛でしたが、今は責任感も強くなり、やってみたいキャラクター、会ってみたいキャラクターや監督も多くなりました。」
4か月間、徹夜の撮影が続いたイ・ギウがドラマを終えた最近は、日頃から楽しんでしたキャンプやサーフィンに行くための準備をしている。親友の俳優キム・サノと共に普段は感じられなかったやりがいや楽しさを感じているという。
WOW!korea提供