今回は、番外編と題しまして、日常で使える便利なハングルをご紹介します。これさえ覚えておけば、咄嗟のことにも対応できるはずです。
日常で使える便利な慣用句
最初に、ペ・ヨンジュンさんファンの経験談に触れます。
あこがれのスターに直接会えるというイベントがあったので、あるファンがハングルを一生懸命に勉強して「あれも話そう」「これも話そう」と意欲満々だったのですが、いざペ・ヨンジュンさんに会った瞬間に感激で頭が真っ白になってしまったそうです。あれだけ勉強したのに、結局は一言もハングルを話すことができなくて、そのことをとても後悔する羽目になりました。
いくら外国語を勉強したとしても、実際に相手と言葉を交わせなければ、とてももったいないことです。逆に言うと、相手と初対面のときは、あれもこれも話せるわけではないのです。決まりきった言葉を覚えて、その言葉を感情こめて話すことによって、十分に気持ちが伝わることでしょう。
人間の気持ちはボディーランゲージで7割くらいは伝わると言います。あとは、いつでもポーンと出てくる決まり文句を覚えておくことが、外国語を話すときの一番のポイントだと思います。
そこで、口からすぐに出やすい「魔法のハングル」を覚えましょう。これを覚えておくと、どんな局面でも大変便利で、相手とも気持ちを通じ合うことができます。
なお、ハングルの最後によく「ヨ(요)」がついていますが、これは言葉をていねいにするときに使うものです。
1.オッテヨ(어때요)
この「オッテヨ」というのは、日本語にたとえれば、「どうですか」とか「どうなの」というニュアンスを持った言葉です。
日本語でも「どうも、どうも」とよく使います。なんでもかんでも「どうも、どうも」で済ませる人もいるくらいです。それに近い意味で、「オッテヨ」は「どうなの」や「どうですか」といった感じになります。
この「オッテヨ」を使う場合は、同時にからだで示したり、感情をこめて言ったりすればなおいいでしょう。たとえば、何かを食べていて料理を指しながら「オッテヨ」と言えば、「おいしいですか」という問い掛けになります。
とにかく、韓国の人は「オッテヨ」をよく使います。何か言葉の間が空くと「オッテヨ」と意味もなく使うくらいです。本来は相手への問いかけの言葉ですが、お互いの会話の口火をきるような形で「オッテヨ」を使うことも多いようです。
さらに、「ヨジュム(요즘)」という言葉を覚えればいいでしょう。これは「最近」という意味です。バッタリ会ったら、「ヨジュム オッテヨ(요즘 어때요)」と言えば、「最近はどうなの?」という意味になります。これは、会話の始まりとして一番口にしやすい言葉だといえるでしょう。
2.チョアヨ(좋아요)
好きな人の顔を見ながら「チョアヨ」と感情こめて言ったら「愛しています」となります。これはめったなことでは言えませんが、普通の付き合いの中で気軽に「좋아요」といえば、「いいですよ」という肯定的な意味になります。
先ほど触れたように「ヨジュム オッテヨ」と誰かに言われとき、「チョアヨ」と答えたら、「まあ、いいですね」という感じになります。
この言葉には「オーケーですよ」という意味もあります。「一緒に食事を?」と聞かれたら、「チョアヨ」と答えて一緒に行けばいいのです。
繰り返しますと、好意を持つ人の目の前で瞳を見つめながら「チョアヨ」と言えば「愛しています」になってしまいますが、そういう状況は少ないと思います。日常会話で気軽に「チョアヨ」と言えば、「いいですよ」「オーケーですよ」という意味ですので、ニコリと微笑みながら使ってみましょう。
3.アンニョンヒ(안녕히)
韓国で挨拶するときの定番の言い方は「アンニョンハセヨ(안녕하세요)」。この「アンニョン」は漢字では「安寧」のことです。
日本では、朝は「おはよう」、昼は「こんにちは」、夜は「こんばんは」と3つの挨拶を使い分けますが、韓国は朝でも昼でも夜でも「アンニョンハセヨ」だけでいいので、この点ではわかりやすいです。
ただ、相手と別れるときの挨拶は韓国で2種類あります。その場所に残る人と、去っていく人で言うことが違うのです。
まず、その場から去っていく人は、残る人に対して「安寧にいてください」という意味で「アンニョンヒ ケセヨ(안녕히 계세요)」と言います。
一方、その場に残る人が去っていく人にサヨナラを言うときは、「安寧に行ってください」という意味で「アンニョンヒ カセヨ(안녕히 가세요)」と言います。
つまり、「アンニョンヒ ケセヨ」と「アンニョンヒ カセヨ」の2つを瞬時に使い分けるわけです。これが意外に難しく、実際にその場になると、「どっちだったかな」と迷って、「アンニョンヒ ケセヨ」と言うべき場面で「アンニョンヒ カセヨ」と間違って言ったりしてしまいます。
こういう勘違いが多いので、「カセヨ」も「ケセヨ」も言わないで、「アンニョンヒ」だけでいいです。特に最後の「ヒ」を伸ばして「ヒー」とすればなおいいでしょう。それを言いながらサヨナラの手を振れば、十分に意味が通じます。
つまり、会ったときは「アンニョンハセヨ」で、別れるときは「アンニョンヒー」。この2つだけをまず覚えましょう。
4.ケンチャナヨ(괜찮아요)
日本の人が特によく知る韓国語が「ケンチャナヨ」です。この言葉は「大丈夫です」「構いません」という意味です。韓国人の性格を評して「ケンチャナヨ精神」とよく言いますが、これには「なんでもオーケー」といったニュアンスがあります。
親しみがこもっているのですが、一方では「いい加減」「適当に済ませる」という意味も含んでいます。
もちろん、人間関係を円滑に進めるときに「ケンチャナヨ」という言葉はとても重宝します。
たとえば、人込みの中でぶつかってきた相手が謝ってきたときに「ケンチャナヨ」と返事をすれば、トラブルにもなりません。
そういう点でも、うなずきながら「ケンチャナヨ」と言うのは、その場をなごませる魔法の言葉だと言えるでしょう。
5.チュセヨ(주세요)
日本語の「~ください」に該当するのがハングルの「チュセヨ」です。お店に行ったときに何かを選んで「チュセヨ」と言えば、「~ください」という意味ですから「買います」という意思表示になります。なんでも指さして「チュセヨ」と言えば、それで買い物を終えることもできるでしょう。
なお、この言葉は単独で使う場合は「チュセヨ」ですが、前に何か単語が入ると、語中が濁音化するハングルの原則にそって「ジュセヨ」になります。
たとえば、「これ、ください」と言うとき、ハングルで「これ」は「イゴッ(이것)」ですので、まとめて言うと「イゴ、ジュセヨ」となります。
単独では「チュセヨ」、前に単語がつくと「ジョセヨ」になると覚えましょう。
6.アンデヨ(안돼요)
この言葉は「駄目ですよ」「できませんよ」という意味です。
旅行に出たときは、観光地などでいろいろと勧誘されることもありますが、きっぱりと断るときはこの言葉が便利です。
やはり、自分の意思をハッキリ伝えないといけないときがあるのです。できないことはできませんし、気に入らないものは気に入らないわけですから、そんなときには「アンデヨ」と言って気持ちを伝えましょう。
特に、「アンデヨ」の語尾を伸ばして「アンデヨー」と言えば、結構やわらかな言い方になります。あるいは、少し頭を下げて「アンデヨ」と言えば、「駄目なんです」といったニュアンスになります。
いけないのは、決定があいまいなこと。気に入らないものを買わされないためにも、「アンデョ」という言葉はぜひ使いましょう。
7.スゴハセヨ(수고하세요)
韓国を旅行していて、たとえば、食堂を出るときやタクシーを降りるときに何か一言かけたいと思ったら、「スゴハセヨ」がふさわしいです。「スゴ」は「苦労」のことであり、「スゴハセヨ」は日本的に言えば「ご苦労さまでした」「お世話になりました」というニュアンスがあります。韓国でもよく使う言葉です。
接客を受けたときに、感謝の気持ちをこめて「スゴハセヨ」と言えば、相手も喜んでくれますし、いい印象を残してそこを立ち去ることができるでしょう。
以上が日常でよく使う便利なハングルです。ほんのわずかですが、覚えておくだけで余裕が生まれます。
言葉というのは、頭で考えて「何だっけかな?」と迷いながら話そうとすると、なかなか出てきません。慣れない外国に来て緊張もしていますし、人と外国語で話すときは思いどおりにならないのです。
ですから、困ったときにすぐ出てくる慣用句を覚えておけばとても便利です。ここで紹介したものはほんのわずかですが、それでも知らないよりはずっと楽です。
もちろん、韓国の人のように発音が完璧ではないでしょうが、外国の人が話しかけてくると、発音がちょっとおかしくても、だいたいわかるのではないでしょうか。それは、聞く側がしっかり理解しようとして聞いてくれるからです。
さらにいいのは、ボディーランゲージを加えることです。自分の気持ちを、顔の表情やからだの仕草で伝えましょう。その際、優しく語尾を伸ばしたり、ニコリと笑うだけでも、印象度が全然違います。
ハングル学習のコツは韓流ドラマ?
語学の学習には大変な根気が要ります。それにもかかわらず、ハングルをマスターしようとすれば、とことん興味が持てるものを教材に使うことが肝心です。
仮に「冬のソナタ」が好きだったら、「冬のソナタ」の全20話を繰り返し見るだけでも、かなりヒアリングの能力が高まると思います。特に、このドラマは正統的な言葉の言い回しが多く、みんなゆっくり喋っています。それだけに教材として最適です。
実際、ユン・ソクホ監督のドラマは「冬のソナタ」以外でも早口ではなく会話がゆったりしていて、心にも響いてきます。反対に、「宮廷女官チャングムの誓い」や「太王四神記」は時代劇なので、会話の聞き取りが難しいところもあります。とはいえ、見ているだけでもハングルに親しむ一歩になるのは間違いないでしょう。
本当に一番いいのは韓国人と会話を交わすことですが、それは誰もが経験できることではありません。あくまでも、自分ができる範囲で語学を学んでいかなければならないのです。そういう意味でいうと、地方にいてなかなか韓国人と会話する機会がないのであれば、ドラマを通してヒアリングの力を高めるのがいいでしょう。
外国語はとにかく「習うより慣れろ」です。私の場合は、韓国の新聞をよく読みました。リスニングだけで韓国語を覚えようとすると、単語のボキャブラリーが広がっていかないことが多いのですが、文章をじかに目で見ていくと、使える単語がとても増えます。仮にわからない単語が出てきても、漢字が基になっているので想像でなんとかわかる場合も多くありました。そういう中で、私は日本語とハングルの間に共通の法則があることがわかってきたのです。そうした法則をいくつも集めて整理したのが本書です。
特に、漢字のハングル読みの中で、日本語に発音が近いものから慣れていくのがいいと思います。それが、韓国語に親しみを持てるようになるコツです。実際、テレビで韓国ドラマを見ていて「似たような単語がいっぱい出てくるな」と思った人も多いはずです。それはなぜかというと、朝鮮半島を通って漢字が伝わってきた経緯があるからであり、日本の音読みは韓国語の発音と似ているのです。
本書では、日本語とハングルの発音が似ている言葉を具体例にしました。それを繰り返し頭に入れることによって、読者の方々がハングルをできるだけ多く覚えていただければ幸いです。
編集=ロコレ編集部
提供:ロコレ
http://syukakusha.com/