<コラム>「JYJ」裁判とガラスの壁

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2010年に誕生した大人気ユニット「JYJ」。その1年前の2009年、当時5人組だったアイドルグループ「東方神起」が分裂していた。5人のうち、3人のメンバーが独立し、別のユニット「JYJ」を構成していた。

「JYJ」の名前は、メンバーのジェジュン、ユチョン、ジュンスの3人の頭文字。この3人は「東方神起」時代の所属事務所である「SMエンタテインメント」との専属契約を「不当な終身契約」だと認識し、2008年あたりから対立していた。しかし、「JYJ」側の意向が「SMエンタテインメント」側に受け入れられることはなく、一連の騒動は裁判沙汰へ。

日本でのマネージメントや商品制作・販売など、「東方神起」のアーティスト活動を一任されていた「エイベックス(avex)」は、「SMエンタテインメント」と「JYJ」の両者に挟まれる形となった。2010年の4月には、5人の「東方神起」の日本活動中止を発表し、「JYJ」との専属マネージメント契約を締結する。

しかし、2010年9月には、「JYJ」の韓国所属事務所である「C-JeSエンターテインメント」の社長が暴力団と関わっていたと主張、それを理由に「日本における『JYJ』の活動休止」を発表する。

これに反感を持った「JYJ」側は、一方的にエイベックスから離れることを発表し、日本でのアーティスト活動を続投する。その後「JYJ」側は、韓国の法廷では「SMエンタテインメント」を相手とし、日本の法廷では「エイベックス(avex)」を相手とし、法廷攻防戦を繰り広げることになる。

2013年1月、東京地方裁判所は、「エイベックス(avex)」に対し、「JYJ」の独占マネージメント権利を主張しないよう、「C-JeSエンターテインメント」に約6億6千万円の損害賠償金の支払判決を下した。これに不服を唱えた「エイベックス(avex)」は、東京高等裁判所に控訴した。韓国では「SMエンタテインメント」と「JYJ」の裁判が終結。その後、日本の裁判所の積極的な仲裁もあり、今回、合意に至った様子。

これを受けて15日、韓国の「C-JeSエンターテインメント」は、公式ホームページで「エイベックスとの間で今までに発生していたすべての法的紛争が終了しました。 当社とエイベックスは今後、両者の活動において、お互いに一切干渉しないことで合意しました。」と発表している。

同社のペク・チャンジュ社長も公式会見で、「日本の司法が『JYJ』の日本活動を保障する内容の第1審判決と第2審の合意に導いてくれたことに感謝しています。これで日本でのすべての法的紛争が解決しました。エイベックスともお互いの活動に一切干渉しないことで合意しました。今回、『JYJ』の日本活動が法的にも保障され、正式に確認された所に最も意味があります。 長い法的紛争にようやくけじめがつけられたのでうれしく思っています。これからは日本のファンと、より頻繁に身近なステージで会えることを祈っています。」と語った。

あの「東方神起悲劇」または「東方神起分裂騒動」以来、日本での専属マネージメント権を主張してきた「エイベックス(avex)」や「SMエンタテインメント」の日本法人。「JYJ」の活動を妨害することはなかったと言われているが、業界のつながりなどにより、結果的には「JYJ」は制限付きの芸能活動を余儀なくされていた。

もちろん、各自の言い分はあり、「契約自由の原則」、「奴隷契約」、「化粧品事業」、「偏った利益分配」、「長期投資」などに対する賛否両論は最近までも絶えなかった。しかし、今回の合意で、日韓を代表する大手エンタメ企業と日韓を代表するアイドルグループとの裁判沙汰は、終結したと思われる。

残るのは、日韓両国における業界の「ガラスの壁」だ。実際にはなかなか見えてはこないが、確かに存在する。日本も韓国も、制度やシステムとしては人類文明を極めた社会だ。人種、障害、性別、宗教、国籍など、個人の属性によって差別されてはいけないことに既に合意している社会なのだ。

日本でも自由になった「JYJ」、これからの快進撃を祈る。そして、業界の中に、日韓の間に、我々の中に、潜んでいる「ガラスの壁」を、その勢いで取っ払ってほしい。

2014.02.17