韓国の兵役経験者の中には、「一等兵と上等兵は天地ほどの差がある」と言う人がいる。「天と地の差」という表現は大げさにしても、ニュアンス的にはそれほど違いがあるということだ。一等兵と上等兵では何が変わるのか。その違いを見てみよう。
入隊10カ月で上等兵に昇級
軍隊とは何かと言うと、「階級によって秩序を保つ徹底した序列組織」と説明することができる。とにかく、階級が人間関係のすべてであり、上官の命令に絶対服従することが組織維持の基本なのである。
それほど階級がモノを言うのが軍隊だが、職業軍人でなくて徴兵制によって入隊してきた現役兵の場合、服務期間(陸軍なら21カ月)に経験する階級は、二等兵、一等兵、上等兵、兵長の4つだけである。
現役兵はどのように昇級していくのか。
- 二等兵(韓国では「二兵」と呼ぶ)
↓ 3カ月後に昇級(新兵訓練期間を含む)
- 一等兵(韓国では「一兵」と呼ぶ)
↓ 7カ月後に昇級
- 上等兵(韓国では「上兵」と呼ぶ)
↓ 7カ月後に昇級
- 兵長(韓国でも「兵長」と呼ぶ)
↓ 4カ月後に除隊
以上が現役兵の昇級システムだ。たとえ、他人より能力が多少劣っていても、よほどでないかぎりは所定の期間が来れば昇級できるようになっている。軍隊は上下関係の秩序が大事であり、実力不足で昇級を見合わせると、軍隊内部の人間関係が混乱してしまうからである。
ただし、特級戦士のように特別に能力が優れている場合は昇級が早まる可能性がある。実力が高い者には積極的に褒賞を与えて、他の兵士に「羨ましい」と感じさせる狙いもある。それが士気の向上につながるというのが軍隊的な考え方なのだ。
給料は17万8000ウォン
階級が変わると、どうなるか。
一番ハッキリしているのは給料が上がることだ。
今年の兵士の給料は次のようになっている。
二等兵 14万8800ウォン(約1万3838円)
一等兵 16万1000ウォン(約1万4973円)
上等兵 17万8000ウォン(約1万6554円)
兵長 19万7100ウォン(約1万8330円)
この給料は昨年に比べて15%アップしている。
給料として考えたら「ケタが1つ足りないのでは?」と思われるが、むしろ「兵役中にお金がもらえるの?」と驚く人もいる。「大人のお小遣い」といったレベルではあるが、上等兵になると一等兵より給料が1万7000ウォン上がるという「目に見える変化」は軍隊でとても大事なことだ。金額で差をつけるということが、立場の違いを鮮明にするからである。
それでは、階級が変わると、具体的に立場はどう変わるか。
昇級で一番変化が著しいのは、一等兵から上等兵になるときだ。1階級上がるだけだが、立場の違いが著しい。なにしろ、支配される側から支配する側に移るからだ。立ち位置が「下」から「上」に激変するのだ。
たとえば、4つの階級を比べると、二等兵と一等兵は「下級レベル」、上等兵と兵長は「上級レベル」と区別することができる。
本領を発揮できる階級
「下級レベル」は軍隊の中でも常に雑務に追われ、休憩時間でも自分で自由になる時間をあまり持てない。また、軍務でも少しの失敗で上官から叱責される。精神的にも辛い時期を過ごさなければならないのだ。特に、一等兵は軍隊に慣れない二等兵を管理する役割も務める。
「軍隊時代は一等兵が一番大変だった」
そう語る兵役経験者も多い。
一方の「上級レベル」。すべて「下級レベル」が動いてくれるので、口だけを動かしていれば何でも用が足りる。また、軍隊生活にも慣れてきて、精神的に随分とゆとりができてくる。
さらに、「兵役も半分が過ぎて除隊が近づいてきた」という希望も見えてくる。上等兵になれば、「一等兵の頃とは余裕がまったく違う」と誰もが思うことだろう。
特に、チャレンジ精神が旺盛なユンホが上等兵に昇級する意味は大きい。それは、休憩時間を含めて、雑務に悩まされないで自分の自由になる時間を多く持てるからだ。
軍楽隊に所属しながら射撃と体力で超一流であることを示す特級戦士になったユンホ。まさに努力の賜物である。
これからは気兼ねなく自分の能力開発に集中できる。まさに、「素敵な怪物になって戻ってくる」という彼がいよいよ本領を発揮できる階級になったのだ。
今年の地上軍フェスティバルに注目
今後のユンホは、第26師団の上等兵として、軍楽隊を率いていく役割を期待されている。
もちろん、上等兵の上には兵長がいるのだが、兵長は除隊が近いこともあって、社会に復帰したあとの準備に入ることが多い。また、気分的にも「除隊待ち」の状態になってしまっている。軍楽隊にかぎらずどの部隊でも、上等兵が活動の主導権を取っていくケースが多くなるのである。
そのあたりをユンホも自覚して、軍楽隊が参加する行事などでも主導的に動いていくことになる。
今後の予定で特に注目したいのが地上軍フェスティバルだ。
これは陸軍が一般市民に広報する最大のイベントで、兵器展示、軍務体験、公演、各種コンテストなどのプログラムで構成される。
特に来場者が注目するのが、兵役中の芸能人も登場する公演であり、昨年はユンホが司会を担当していた。ただし、入隊して間がない二等兵だったので、遠慮する部分が多かったはずだ。
今年の地上軍フェスティバルは鶏龍(ケリョン)市の非常滑走路一帯で10月2日から6日まで開催されるが、この重要な行事をユンホは上等兵として迎えることになる。
昨年とは階級がまるで違う。今度は公演の企画と運営の両面から獅子奮迅の活躍をするのでは……。
誰もが気軽に入場できる地上軍フェスティバル。今から楽しみにしているユンホのファンも多いことだろう。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
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