第1回『冬のソナタ』編
連日、多くのドラマが放送される韓国において、その撮影スケジュールは過酷の一言。俳優・スタッフたちは全身全霊を込めて作品に臨んでいる。それだけに、作品の数だけ撮影現場にも多くの物語がある。そんな秘蔵の撮影エピソードを大公開。これを知れば、ドラマがもっと好きになる!
監督の熱意に天が答えた
最初に取り上げるのは日本の韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』。今も根強いファンが多い名作中の名作だ。
本作は、表題通り冬を描いたドラマであり、記憶に残る名シーンの数々には真っ白な雪の存在があった。雪が見せる儚げな美しさは、『冬のソナタ』を語るうえで外すことのできない要素だ。しかし、実際の撮影現場では雪がまったく降らないで、ピンチになったこともあった。当時の様子を見てみよう。
『冬のソナタ』の韓国での初回放送日は2002年1月14日。12月12日には南怡島(ナミソム)で初めての撮影が行なわれたのだが、肝心の雪がまったく降らなかった。
ユン・ソクホ監督は、「雪が降る北海道まで行って撮影するべきだ」と主張したが、余裕のない制作スケジュールの前に、その考えは断念せざるをえなかった。
意を決したユン・ソクホ監督は、降雪シーンのないままに撮影を進める覚悟を決めるのだった。監督の無念は大きかったことだろう。
しかし、天は名作の誕生を見放さなかった。
いざ撮影が始まると予想を越えた大雪が降りだしたのだ。ユン・ソクホ監督の熱意が天候まで動かしたのかもしれない。
こうして、念願の降雪の中で撮影されたシーンが、チュンサンとユジンが雪の中で触れ合うタイトルバックである。
ギリギリまで妥協のない最終回
撮影当初から「雪が降らない」「脚本が遅れている」など、多くの試練が与えられた『冬のソナタ』。当然、そのしわ寄せは撮影スケジュールに直撃する。他のドラマ以上にハードな撮影は俳優・スタッフを問わず、多大な疲労を与えていた。さらに、冬を描いたドラマだけに、撮影場所は極寒地が多くて、それも過酷さに輪をかけていた。
そんな状況の中、ペ・ヨンジュンは主演として作品を引っ張っていく必要があった。彼は朝晩の栄養剤の点滴をすることで撮影に臨むのだが、物語序盤では風邪をこじらせたときもあった。しかし、ペ・ヨンジュンは不屈の役者魂で撮影に穴をあけることはなかった。
その時、撮影されたのが、物語序盤に南怡島でユジンとチュンサンが唇を交わす名シーンである。ペ・ヨンジュンの役者魂を感じさせるエピソードだ。
一方、撮影のドタバタは最後まで続く。
2002年3月19日午後10時、『冬のソナタ』は多くの視聴者に惜しまれながら最終回を放送する。同日にはソウル市内でKBS主催のヒット記念パーティーが催された。しかし、出席する俳優・スタッフの多くが疲労の色を隠せていなかった。
それもそのはず。なんと、『冬のソナタ』の最終回の撮影が終わったのは、同日の午後4時だったのだ。
誰もが最後まで全力疾走した『冬のソナタ』。名作誕生に秘められた、俳優・スタッフたちの熱意を高く称賛したい。
(文=ロコレ編集部)
コラム提供:ロコレ
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