「コラム」日本と違う韓国のビックリ/第18回 外で物を売る人々

 

地下鉄の車内は楽しい

ソウルの地下鉄の車内には、いろいろな売り子がやってくる。

突然現れたかと思うと、車内の人に向かって大声で口上を述べ、巧みに商品を売り始めていく。

今までに見た中では、傘の他に、雨合羽、扇子、乾電池、地図、Tシャツなどが演劇がかったパフォーマンスの中で売られた。

東京あたりだとすぐに規制されてしまいそうだが、ソウルの地下鉄は黙認なのか。かくして、車両から車両へと渡り歩く売り子がたくさんいる。

その日、車内に現れたのは、チューインガムを売る親子であった。

6歳くらいの女の子を連れた30代の母親がどこからともなく現れて、乗客1人1人に紙片を渡していった。

そこには次のように書かれてあった。

「この子の父親は交通事故で死んでしまい、私たちは明日の食事にも困るほどなのです。どうか、慈悲の心があるなら、このチューインガムを1000ウォンで買ってください。あなたの尊いお金によって、この子が救われます」

女の子は地味な服を着ていて、非常に沈んだ表情を浮かべて車内の中央にポツンと立っていた。

ひととおり乗客に紙片を配り終えた母親は、乗客がその紙の文章を読みおえた頃合いを見て、今度はチューインガムを持って再び乗客の間を回り始めた。

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2017.11.01