4月18日に放送された第7話で視聴率が再び上昇気流に乗った『テバク』。これから、ドラマはますます面白くなるだろう。注目はやっぱりチャン・グンソクの演技だ。ドラマの中ではテギルの逆襲が始まったが、俳優チャン・グンソクも、これから真価が問われてくる。
苦しみ抜く主人公
物語は薄情である。
主人公はとことん痛めつけられる。
これでもか、これでもか、と苦難が押し寄せてくる。
かわいそうで見ていられない……けれど、見てしまう。クライマックスの大逆転に向けて、主人公はそれまでに艱難辛苦を押しつけられるのだ。
けれど、それがすべての伏線になる。どんなハッピーエンドでも、最後の1%の前の99%は、アンハッピーなのである。その落差が大きければ大きいほど、心地よい衝撃が残る度合いが高くなる。
つまるところ、ドラマとは「主人公の苦難を視聴者が受け止めて、最後の一瞬に向けて共感してもらえるかどうか」なのである。
そうであるならば、『テバク』の場合はどうだろうか。
チャン・グンソクが演じるテギルは、第6話までにこの世の苦難をすべて引き受けたかのような存在だった。しかし、第7話では違った。まだ中盤に至っていないが、物語が確実に動きだした。
テギルの宿敵となる李麟佐(イ・インジャ)に扮したチョン・グァンリョル(写真/韓国SBS『テバク』公式サイトより)
チャン・グンソクが得たチャンス
苦難が続いてテギルの人生。しかし、第7話でようやく光がさした。
最強の師匠を得たからである。
師匠が言った。
「ついて来い!」
その瞬間にテギルの前に道ができた。生まれて初めて、自分の未来に続く道が見えてきたのである。
最大の敵である李麟佐(イ・インジャ)に向けて、テギルの逆襲が始まると実感することができた。
これからのチャン・グンソクの演技が見ものである。
それまでの彼は、無鉄砲のお調子者の役、父を殺されて復讐を誓う役、最下層の身分に落ちた役を演じてきた。まさに体当たり。過去の栄光を捨てる決心で、テギルの姿に全身全霊を傾けてきた。
いろいろな意見があるだろう。批判の声も聞こえる。それは望むところだ。アンチがいてこそ、存在が大きくなる。
俳優である以上は、演技でアンチに認めさせることである。
チャン・グンソクは『テバク』でその大きなチャンスを得たのだ。これこそが俳優冥利というものだろう。
テギルの成長に向けてドラマは進行していく(写真/韓国SBS『テバク』公式サイトより)
どこまで視聴者が共感できるか
テギルの宿敵である李麟佐に扮しているのはベテランのチョン・グァンリョルだ。演技力に定評がある俳優だけに、『テバク』でも抜群の存在感を見せている。
しかし、思い出してみよう。第1話の冒頭の場面。雪の降る中でテギルは李麟佐と対峙して、「民のための政治」を力説していた。
このシーンこそがクライマックスに向けた暗示なのである。
さんざん李麟佐にやられてきたテギルがついに宿敵と同等に対峙できるところまできた。『テバク』はその過程を描いていくわけであり、チャン・グンソクが演じるテギルもドラマの進行とともに大きく成長していく。
その成長を感じさせる演技こそが、チャン・グンソクの真骨頂になるのだ。それまではテギルも大いに苦労することになるが、どこまで視聴者が共感してテギルを応援することができるかどうか。それが物語の成否を分ける。
重ねて言うが、ドラマは薄情である。もしかしたら、それは世間そのものなのかもしれない。
しかし、最後まで薄情のまま終わるわけではない。
残り2カ月。成長するテギルに感情移入する至福の時間を楽しみたい。
(文=康 熙奉〔カン ヒボン〕)
コラム提供:ロコレ
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