「コラム」(前編)ヒョンビンが乗り越えた海兵隊の訓練

 

IMG_4438前編/覚悟の入隊

男の中の男の部隊

韓国の軍隊の中で、軍務が一番厳しいと言われているのが海兵隊である。体力的にも精神的にも、限界を超えるほどの鍛錬と辛抱を強いられる。

そんなに厳しいなら「何が何でも海兵隊は避けたい」と思う若者が多いかというと、実態は逆である。韓国では海兵隊に志願する人が多いのだ。あまりに志願者が多いので、希望通り海兵隊に入れない人が続出するくらいだ。

なぜ、韓国の若者は海兵隊を目指すのか。

それは、あえて厳しい軍務に就いて自分の限界を試そうとする若者が多いからに他ならない。

しかも、海兵隊は韓国で「男の中の男の部隊」と言われていて、海兵隊の軍務をやり遂げると社会に戻った後でも一目置かれる存在になる。つまり、同じ軍隊でも、経験することで箔が付くのが海兵隊なのである。

ヒョンビンは俳優として実績をあげながら、20代の終わりに海兵隊に志願した。これは特筆すべきことだ。なぜならば、20歳前後の隊員が多い中に10歳くらい年上のヒョンビンが入っていくのは体力的に相当きつい。しかも、彼は一番年上になってしまうので精神的にも負担が大きいはずだ。

彼は言った。

「海兵隊で落伍したとしても、後悔はしたくないのです。やらないで後悔するよりは、やって後悔したほうがまだましじゃないですか」

このように決意したヒョンビン。海兵隊の新兵訓練の入所式で、ヒョンビンが700人以上の同期の代表として宣誓を行なっている。

それは、年長だからという意味もあったと思う。名誉なことではあるが、10歳近く年下の同期の中に入っていったヒョンビンには並々ならぬ決意があったと言える。

厳しさが増す応用訓練

841dd0f0617f8df1be39c9c1a8701335上陸作戦の訓練が続く(写真/韓国海兵隊公式サイトより)

実際に海兵隊の軍務は大変厳しいが、それは新兵訓練においても際立っている。陸軍の新兵訓練は5週間だが、海兵隊は7週間にわたって行なわれる。それでは、その新兵訓練がどういう風に行なわれるかを具体的に見てみよう。

海兵隊に入隊する人は、まず浦項(ポハン)にある新兵訓練所に入所する。

それからは、細かい身体検査を受けてから支給品を受け取り、軍人としての精神を叩きこまれて、制式訓練(軍人としての敬礼や歩行を身につけるための訓練)を徹底的に受ける。

そこまでは、陸軍でも海軍でも軍人の基礎ということで同じなのだが、海兵隊の場合は応用訓練になってから厳しさが如実にあらわれる。

海兵隊で専門的な訓練というと、まずは水陸両用車訓練である。

海兵隊の任務は、海から上陸して敵地を奪還することだ。当然ながら敵は完全な防衛態勢を敷いて海兵隊を迎え撃つので、どんな上陸作戦も多大な犠牲を強いられる。それだけ、作戦として非常に難しい局面が多いのだ。

よほど優れた軍隊でないと作戦は成功しない。そこに海兵隊の厳しさがある。

海兵隊員は素早く水陸両用車に搭乗し、船を海岸に向けて進め、陸地に到達した瞬間に各隊員が上陸しなければならない。当然ながら敵は待ち受けているので、雨あられのように銃弾を受ける。そこが、生死をわける一番重要な局面であり、生き残るために敵の銃弾をかいくぐり、上陸したらすぐ前に向かって突撃しなければならない。

このとき、砂浜にからだを伏せたのちに立ち上がって前進する、という一連の動作を繰り返すことが不可欠だ。それは体力を大変消耗する訓練であり、海兵隊の新兵を最初に待ち受ける最大の関門となる。

それと同時に行なわれるのがゴムボート訓練である。海岸の地形によって、水陸両用車が上陸不可能な場所がかなり多い。その際に役立つのがゴムボートだが、波の荒い海で操作するのは大変難しいので、それを使った上陸訓練も頻繁に行なわれる。

ゴムボートの重量は100キログラムを超えるが、それを訓練兵で持ち上げたりする訓練も欠かせない。ゴムボートは自分を守るための重要な道具であり、それを自在に扱えないと自分の身に危険が及ぶため、その訓練を徹底的に行なう。

(文=康 熙奉〔カン ヒボン〕)
コラム提供:ロコレ
http://syukakusha.com/

2016.04.02

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