「コラム」(連載)第1回/『テバク』のここが面白い

e4493acf8a34a9e4f49e79d0ef68e040チェ・ミンスが演じる粛宗(写真/韓国SBS『テバク』公式サイトより)

 

第1回

 

チャン・グンソクの出演場面

3月28日から韓国SBSで放送が始まったチャン・グンソク主演の『テバク』。第1話は非常にドラマチックな展開で幕をあけた。
チャン・グンソクが登場するのは冒頭の数分間。雪が降る中で、成人したテギル(チャン・グンソク)が、後に反乱を起こす李麟佐(イ・インジャ/チョン・グァンリョルが扮している)と対面する場面が描かれている。
「民のためにならない王は除かなければならない」
テギルが李麟佐にそう強く言う。この言葉によって、今後のテギルの立ち位置が予測できる。最下層の身分に属するイカサマ師とはいえ、テギルは政治が民を苦しめてはいけないという強い信念を持っているのだ。
そんなテギルに扮したチャン・グンソク。冒頭の数分間だけの登場だったが、凍えるような寒さの中で精悍な表情を見せていた。
冷静に演技を見ると、やや気負いが出ていた。
しかし、悪いことではない。
ラブコメにばかり出ていたチャン・グンソクが、今度は新しい自分を見つけるために『テバク』への出演を決めたのである。共演者は本格派の芸達者ばかり。その中で主役を張れば、気負いが出るのは当たり前だ。むしろ、それをパワーに変えて、ドラマをグイグイと引っ張っていってほしい。
それでこそ、10歳下のヨ・ジング(テギルの弟の英祖〔ヨンジョ〕に扮している)も生きてくるというものだろう。

d6e5b0ac35fe2606749becc8ad363a5dチョン・グァンリョルが演じる李麟佐(写真/韓国SBS『テバク』公式サイトより)

 

スリリングなシーンが多い

第1話のストーリーは1693年から始まっている。このときの粛宗(スクチョン)の正室はあの張禧嬪(チャン・ヒビン)だった。
しかし、李麟佐はポクスンという女性に目を付けて、粛宗の側室に送り込もうとする。ポクスンは王宮内で洗濯、水汲み、掃除などを担当する雑役係の女性である。彼女には博打に身を崩している夫がいるのだが、李麟佐はポクスンが夫を見限るように策を弄していく。
こうした展開の中で、やはり第1話の中心人物は粛宗と李麟佐とポクスンである。それぞれ、チェ・ミンス、チョン・グァンリョル、ユン・ジンソが演じている。
それにしても、チェ・ミンスとチョン・グァンリョルはさすがである。どこが「さすが」かというと、通り一遍の演技ではなく、その人物にいくつもの光を当てて、そこから生じる陰の部分をさりげなく見せている。
特にチェ・ミンスの場合は、威風堂々たる王を演じながら、どこか頼りない部分をチラリと見せる。
そこに、視聴者は人間味がある王という存在を感じるのではないだろうか。
チョン・グァンリョルの場合は、謎めいた裏世界の人物を演じながら、そこに使命感のような信念を裏付けしている。表現の仕方がとても重層的なのである。
ただ、彼らの内なる演技を堪能しようとすると、過剰な音楽に気をとられてしまう。このあたりは、いつもの韓国ドラマの課題かもしれない。
仰々しい音楽を少し控えてくれたら、ベテラン俳優の渾身の演技をゆっくり堪能する余裕が生まれるのだが……。
他に印象的だったのは、市中の活気あふれる賭場の場面。朝鮮王朝時代の庶民の生きざまをうかがいしることができる。
序盤はスリリングな場面が多かった。
話が大きく動く第2話以降に期待がもてる。

 

(文=康 熙奉〔カン ヒボン〕)

コラム提供:ロコレ

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2016.03.30