「コラム」第1回 兵役解説/陸軍軍楽隊と義務警察

軍隊の生活も多様化してきている(写真はイメージ/韓国陸軍公式サイトより)

軍隊の生活も多様化してきている(写真はイメージ/韓国陸軍公式サイトより)

芸能兵に代わる存在
現在の韓国国防省が人材活用という点で力を入れているのは、同じ現役兵でも本人の能力を生かせる軍務に就かせることや、軍務の最中に兵士たちが自己開発を積極的に行なえるようにすることである。

前途有望な20代の若者を軍隊に入れて、画一的な軍務だけに専念させるのは、韓国のように貿易立国として世界を相手にビジネスをしている国にとって大変な損失になる。そのことを痛感した韓国政府は、適材適所の視点を兵役に取り入れるようになった。

適材適所といえば、芸能人ならかつては芸能兵という存在があった。正式に言うと、芸能兵は国防広報院・広報支援隊員のことで、軍の活動を広報するイベントに出演して活躍していた。

しかし、広報支援隊員の不祥事が続き、2013年に廃止になってしまった。

そうなると、芸能人が兵役中に自らの能力を生かせる場が極端に少なくなった。しかし、なくなったわけではない。たとえば、陸軍の軍楽隊がそれに当たる。

軍楽隊は、文字通り、軍に所属する楽団である。外国の軍隊との交流行事や軍の活動を紹介するイベントで演奏したりする。音楽を職業にするアーティストにとって、かつての芸能兵に匹敵する存在だといえるだろう。

同じく、芸能人が特技を生かせるのが、ソウル地方警察庁に所属する警察広報団である。警察広報団は基本的に18人で構成されていて、学校を回りイベントを通して非行防止や交通遵守をアピールしたり、公の交流親睦行事でパフォーマンスを披露したりする。ここに入るためには、兵役の代替制度として義務警察を選び、さらに応募者多数の中から選抜試験を通り抜けなければならない。とはいえ、優れた音楽的才能があれば、十分に合格可能である。

芸能人が兵役に就くとき、陸軍の軍楽隊や義務警察の警察広報団をめざすことは、自分の特技を生かすことや、軍が適材適所を進めるうえでも理にかなったことなのである。

 

有益な軍務代替制度
軍楽隊は、陸軍にも海軍にも空軍にもある。ただし、芸能人が軍楽隊をめざすとすれば、選ぶのは陸軍になるだろう。兵役期間が21カ月と一番短いからだ(ちなみに、海軍は23カ月で空軍は24カ月である)。

軍楽隊は希望者が多いので選抜試験が実施される。東方神起のユンホはこの選抜試験に合格して第26師団の軍楽隊に配属された。

日常の軍務は軍楽隊としての練習を行なったり実際に行事に参加したりする。そういう意味では「特技兵」にあたるのだが、陸軍の兵士であることに変わりはないので、基礎的な軍事訓練も同時に行なっている。

次に義務警察を見てみよう。

もともと義務警察は、普通の警察官の任務を補う形で「デモの鎮圧」「国会や空港周辺の治安維持」「交通整理や派出所勤務」などを行なってきた。

実際に、警察官の人手が足りない状況の中で、兵役対象者に警察の手伝いをさせてきたのである。兵役の義務を負う側からしても、市民生活の保護に貢献できるというやり甲斐があった。

そういう意味では、とても有益な軍務代替制度であり、その中の一つがソウル地方警察庁の警察広報団なのだだ。現実的に芸能人が数多く在籍してきており、現在は東方神起のチャンミン、スーパージュニアのドンヘとシウォンが所属している。

 

多様な兵役遂行の時代へ
陸軍軍楽隊と義務警察は、兵役中に芸能人が特技を生かせる場所として有効である。それは間違いない。

ただし、決定的に違うのは、陸軍軍楽隊は軍隊であるのに対して、義務警察はそうではないということだ。日々の生活で受ける重圧には差がある。

その点を突いて、義務警察の警察広報団には批判が向けられることがある。特に、軍事境界線の警戒で厳しい軍務を経験した人たちから、「兵役の代替にしても警察広報団という存在はいかがなものか」という声があがってくる。

それを意識すればするほど、義務警察の警察広報団に所属するメンバーは身が引き締まるだろう。「国民から職務に取り組む姿勢を見られている」と感じざるをえないのだ。

ただし、義務警察に入る兵役遂行者が軍務を行なわないわけではない。彼らも最初は4週間の新兵訓練を受けている。通常の兵士に比べると1週間短いが、その分、効率的な訓練で新兵としての基礎を身につけていく。

兵役を全うする方法は、今後ますます多様化するだろう。近代兵器の装備によって今では以前ほどの兵力を維持しなくてもいい状況になっている。現に国防省は2022年までに兵士の数を63万人から約52万人に減らす計画を立てている。

そういう流れの中で、むしろ軍楽隊や警察広報団の人員を増やしてもいいのではないだろうか。兵役の遂行にも、ダイバーシティ(多様性)というものが求められているのである。

(文=康 熙奉〔カン ヒボン〕)
コラム提供:ロコレ
http://syukakusha.com/

2016.03.24

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