さらにストーリーについて立田さんは「マンスがサイコパスではない普通のごく一般的な小市民という設定も生きていますよね。そんな彼がなぜ『他に選択肢がない(=NO OTHER CHOICE)』と感じてしまったのか。極端な選択すぎますが、共感できないでもないという点も面白いですね」と触れると、森さんも「欧米でも本作の評価が高いというのは、中産階級の没落を扱っているのが鍵なんじゃないかと思っています。日本でも中間層が消滅してきているということはよく言われますが、かつて良くも悪くも実力社会と言われていたアメリカですら、今は経済的階層が固定してしまっているので、世界的な共通事項なんだなと思います。少し前までは中産階級も幸せに暮らせる社会だったのに、今は頑張っても無理。だから犯罪に手を染めてしまうという流れに説得力がある気がします。主人公は序列が上がれば何とかなると考えているが、今は通じない。邦題は『しあわせな選択』ですが、これが秀逸で、観終わると非常にアイロニカルで効いてきますよね」と指摘する。加えて立田さんは「日本も学歴社会とは言われていますが、韓国はもっとシビアなんですよね。いい大学を出て、誰もが知る大企業に就職できなかったら“半分人生終わった”くらいに言われてしまう。韓国の方々は20代そこそこでそんな現実に直面し、人生に絶望してしまうという状況があると。そんな点も見事に反映されています」と韓国社会を痛烈に風刺した作品であることにも触れた。
パク・チャヌク監督ファンの二人の話は尽きず、その他にもイ・ビョンホンの名演やソン・イェジン扮するミリの糟糠の妻なキャラクター像についてなどトークショーは大いに盛り上がり、まだまだ話足りないという名残惜しい雰囲気の中イベントは幕を閉じた。
【STORY】
「全てを叶えた」——製紙会社で25年間、堅実に仕事をしてきたマンスは、心からそう思い、妻と2人の子供、2匹の犬と郊外の大きな家で“理想的”な人生を送っていた。突然、会社から解雇されるまでは。必死に築いてきた人生が、一瞬のうちに崩壊!? 好調の製紙会社への就活も失敗したマンスが閃いたのは、衝撃のアイデアだった。それは……「ライバルがいなくなれば、仕事は手に入る」。
監督:パク・チャヌク『オールド・ボーイ』、『お嬢さん』、『別れる決心』
出演:イ・ビョンホン 『コンクリート・ユートピア』「イカゲーム」、ソン・イェジン 『私の頭の中の消しゴム』「愛の不時着」、パク・ヒスン 『警官の血』、イ・ソンミン 『ソウルの春』、ヨム・ヘラン 「おつかれさま」、チャ・スンウォン 「暴君」
2025年|韓国|韓国語・英語|カラー|スコープサイズ|139分|日本語字幕:根本理恵|英題:NO OTHER CHOICE|PG-12
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ ⓒ2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
3月6日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開








