演技の中で数えきれないほど、他の人物にならなければならなかった時間と違って、絵を描く瞬間は女優ハ・ジウォンではない、完全な“私”として存在することができた。彼女にとって、絵は単純な創作行為を越えて、“本当の自我”を確認する通路だった。
「20年以上(劇中の)キャラクターとして暮らしてみたら、ある瞬間『私はなぜ俳優をしているのか』というアイデンティティーの混乱が来ました。俳優ハ・ジウォンと人間ハ・ジウォンを分離して眺めたら、衝撃と悲しみなど、あらゆる感情が溢れ出るんですよ。空が崩れるように、途方もないジェットコースターに乗ったようでした。小さな舞台の外で、私と本当の世の中にいるから作業を始めることができると思いました」
パンデミックのせいで、役者としては不可避な“停止”をするしかなかったが、同時に芸術家としては新しい出発点に立つことになったのである。
ハ・ジウォンは、来年放送予定のENAドラマ「クライマックス」を通じて、本業である女優に復帰する予定だ。同ドラマは、韓国を動かす巨大な財界と芸能界を背景に、果てしない欲望を持った夫婦が、それぞれ首脳の席に上がるためにお互いを踏みつけていく物語を描く。映画「非光」でタッグを組んだイ・ジウォン監督と2回目のタッグだ。
ハ・ジウォンは、演技と絵についてどちらも「自分を表現することができる手段」という共通点があるが、絵を描く時くらいは自分が主体になることができる、という点で違いがあると説明する。彼女は、「キャラクターを通じて表現する演技と違って、絵の作業はひたすら私が主体になって、私の話をキャンバスに込めなければならない」とし、「似ているように見えるが、実際には非常に違う」と語った。続けて、「特に展示会は率直な私の話を世の中に見せる席なので、責任感が大きくなってかなり緊張もする」とつけ加えた。
「作業が誰かの心に静かな波動を起こしたら、それだけで芸術を続ける理由は十分にある」というハ・ジウォンは、今後も2つの領域を行き来して、自分だけのストーリーを続けていく予定だ。
「絵の作業はドラマ・映画作業とは、とても違います。さらに原初的な印象、生ものの私を見せる作業です。今私がしているのは過程であり、完成は死ぬ直前ではないかと思います。暮してきた姿、そのままをずっと話していきたいです」
彼女の話のように、今回の展示は一つの結果物であり、同時に過程の一部だ。今後、女優であり画家としてハ・ジウォンがどのような道を歩いて行くことになるかは分からない。しかし明らかなのは、彼女は演技と絵というお互いに違った言語を通じて、絶えず自分を探求しているという事実である。
WOW!Korea提供







