国防省が兵士の管理において、一番力を入れないといけないのが兵舎の改善である。もともと、新兵訓練所や各部隊においても兵舎では大部屋が基本で、10人以上の人たちが1坪にも満たない自分のスペースで雑魚寝のような形で共同生活をしていた。
今の若者に昔の生活を強いている
何十年も前であれば韓国もまだ貧しい時代で、各家庭でも余裕のある生活をしていたわけではない。だからこそ、軍隊での雑魚寝にも耐えられた。
しかし、韓国が経済成長を果たしたあと、それぞれの家庭でも生活が向上している。それなのに、軍隊では旧態依然としていた。そこに改善の余地があった。
そもそも、韓国には「母親は息子を舐(な)めるように可愛がる」という言葉もあるほどで、男子は大事な御曹司として母親に甘やかされて育つ。そういう人がいきなり軍隊に入って、大部屋で雑魚寝という形で軍隊生活をするのは、まさに生活の激変である。
しかも、階級や先輩・後輩の厳しい関係があり、新兵は非常に重圧を感じるものだ。ときには、いじめやしごきなどの問題も生じる。そんな軍隊生活に耐えられなくなって、兵士の中には自殺したり精神的に病んでしまう人もいる。
軍隊である以上は共同生活が基本なのだが、今風の若者を昔ながらの兵舎で生活させることに無理が生じてきた。そんな事情もあって、国防省は兵舎の改善に力を入れざるをえなくなった。
最近では、10人以下の少ない人数で共同生活をする形にしたり、階級ごとに部屋を分ける取り組みも行なわれている。
それまでは上官と部下が同じ部屋で生活しており、部屋の中でも上下関係が生まれていた。それが、いろいろな問題を引き起こした。改善策として、階級ごとに部屋割りをする動きも出てきたのだ。
とはいえ、軍隊は1日でも早く入った人が先輩になる。階級は同じでも、先輩・後輩という上下関係が生まれている。つまり、同じ階級の中でも根本的ないじめやしごきはなくならないのだ。
むしろ、上官がいたほうが歯止めになる場合もある。そう考えると、一番の改善策は個室にすることかもしれないが、軍隊にそこまでの余裕はない。
そうであるならば、コンピュータ室、ゲーム室、トレーニング室、カラオケルームといったものを充実させて、自由時間にリラックスできるようなスペースを用意することも大切だ。
ただ、あくまでも軍隊なので規律が何よりも優先する。上官の命令には絶対服従だし、共同で作戦を遂行するという意味では団体生活が欠かせない。また、緊急出動を考えた場合、大部屋で生活しているほうがみんな素早く動けるのは確かだ。
軍隊である以上は、家庭のような快適な生活を求めるわけにはいかない、という論理もある。国防省は兵舎の改善を強調しているが、どれだけ進展するかは未知数であり、やっぱり「軍隊ではひたすら我慢」という状況はあまり変わらないかもしれない。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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