韓国ドラマの『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』には、印象的なキャラクターが数多く登場するが、その中でも、役割として何かと波風を立てているのが、三兄弟の末っ子のギフンであった。
重層的な展開
『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』では、濃厚な兄弟愛が描かれている。イ・ソンギュンが演じる主人公のドンフンは三兄弟の二番目で、長男がパク・ホサンの演じるサンフンである。そして、ソン・セビョクが扮する三男がギフンだ。
彼は天才的な映画監督と評された時期があった。しかし、最初の商業映画で失敗し、以後は業界の中で恵まれない。
とにかく、気性が荒い。気に入らない奴にはすぐに拳が出てしまう。結果的に、映画の世界で居場所がなくなり、借金取りに追われていた兄のサンフンと一緒に清掃業を始める。
その現場で偶然に会ったのがユラだ。クォン・ナラが演じている。
ユラはギフンの商業映画で主役を担った女優だったのだが、彼女の演技が不評で映画もコケてしまう。いわば、ギフンにとって失敗作の原因を作った元凶なのだが、そんな相手と再会し、ギフンの「もやもや」は歯止めがきかなくなる。
しかし、感情はもっと複雑だ。結局、ユラに過度な重圧をかけたことが映画の失敗につながったことをギフンは悟り、彼はユラに対して負い目を感じるようになった。
そうした気持ちが深まり、やがてギフンはユラに強い愛情を感じていく。
『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』は主人公のドンフンとジアン(IUが演じている)のメインストーリーだけでなく、様々な事情を抱えた男女のサイドストーリーも細かく描かれるが、ギフンとユラの関係も重層的に展開されていった。
とはいえ、ギフンは気性が激しすぎるので、彼が出てくる場面は緊張感が倍加する。いわば、ギフンというキャラは、見ている人をハラハラさせる役割を担っている。それゆえ、ゆったりしていたドラマの流れを止めてしまうところもあり、ときには不快な男と思われる部分もあった。
しかし、感情を抑えすぎてしまう多くの登場人物の中で、ギフンはどこまでも短気で挑発的で、それでいて情がとことん厚かった。
ドンフンが暴力沙汰に巻き込まれたと聞いたときのギフンの激高ぶりは、どう見ても普通ではなかったが、それがギフンという男の本質なのだ。彼は損得を計算するような男ではなく、自分の信じる道をひたすら直進する不器用な男だ。
それでも、終盤になると、ギフンの話す言葉の一つひとつが実に味わい深くなる。それは映画監督として、あふれるほどの創造性を持っていることの証でもあった。
かくして、ドラマの最後の最後まで、ギフンはその行く末がとても気になるキャラクターになっていた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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