最近、韓国映画の封切り成績は悲惨な水準だ。
昨年11月に封切られた「フクロウ」を除いては、全ての封切り作が損益分岐点の半分にも及ばなかった。今年公開された作品の中で、観客数が100万人を超えた作品は1月に封切られたファン・ジョンミンとヒョンビン主演の「交渉」だけだった。同時期にNetflixなどのOTTで公開された映画「JUNG_E/ジョンイ」と「キル・ボクスン」が非英語圏基準のストリーミングで世界1位になったという朗報とは全く異なる温度差だ。
パンデミックとOTTが変えた韓国映画
新型コロナ感染症が流行する前まで、映画は比較的安い価格で気軽に時間をつぶせる娯楽として認識されていた。しかし、新型コロナ感染症によって人々の生活が変わるとともに急成長したNetflixなどのOTT(オンライン動画ストリーミングサービス)産業は、消費者の視聴パターンも変えて行った。それによって韓国映画は今危機に陥っている。
映画館のチケット価格も1万5000ウォン(週末基準、約1500円)レベルまで上がった。観客が減って、増えた損失を埋めるための臨時的手段だったが、映画館で映画1本見るために、OTTの1か月の購読料より高いお金を払わなければならなくなった。映画関係者は「そのせいなのか、最近、観客は(気楽に作品を選べる)OTTで作品を見る時より、はるかに厳しい基準で劇場映画を選択する」と話した。
専門家たちもこの危機から抜け出すためには、映画界が、OTTがもたらした変化を体得し、それに合わせて新たなパラダイムを確立しなければならないと口をそろえる。映画「犯罪都市」シリーズを製作したチャン・ウォンソクBAエンターテインメント代表は「観客の立場からすれば、映画館で上映する映画が面白くなかったのが最大の理由」とし、「チケット価格が上がり、映画館で見るのを選択する観客の視線が以前より能動的で厳しくなった」と分析した。
映画評論家のチョン・ジウク氏は「製作会社や投資会社が、映画では難しいと言ってOTTコンテンツに投資の方向を変えるのは、さらに映画の成長を止めることになる」とし、「より果敢に良い映画に投資してこそ、観客が映画館に行こうという理由になる」と助言した。
10週から4週になった「ホールドバック」
映画館で上映される映画を保護する安全装置だった「ホールドバック」(劇場公開後、OTTなどオンラインでの公開を待つ期間)さえ危ない勢いだ。映画界は劇場公開後、オンライン公開まで約10週間の待機期間を設けていた。最近は長くて8週間、少ないと4週間待つとOTTやIPTVで映画を視聴できる。ついにCoupang(クーパン)が提供するOTTサービスである「Coupang Play」が映画館で上映中の映画を「ホールドバック」を経ずに無料公開するサービス(クープルシネマ)を計画中というニュースが広がり、映画人たちの不安はますます大きくなっている。
映画「犯罪都市」のチャン代表は「長い間映画産業を守ってくれたホールドバックという秩序が崩れるのは望ましいと思わない」と憂慮した。ただ「消費者はできるだけ安く良いコンテンツを見たいと思っていて、OTTは消費者のニーズに合わせて良いコンテンツをたくさん誘致し、会員の離脱を防いで生き残らなければならない。消費者と産業のニーズがマッチして生じる市場経済の流れに、人為的に逆らうことはできないと思う。頭ごなしに反対するのではなく、実際このような試みが行われた場合に備えて、どういう対策を講じるべきか、産業関係者が悩まなければならない状況だ」と話した。
韓国の輸入配給会社協会代表で「at9film」代表のチョン・サンジン氏は「韓国映画が危機を迎えたのは、映画館のチケット価格が高くなったというよりも、ちょっと待てばチケット代よりはるかに安い価格でOTTで映画を楽しむことが出来るという認識が生じたためというのも大きい。監督や作家、俳優などの作り手側が、どんどん消えていく『ホールドバック』を守るため、直接声をあげる必要がある。映画館のスクリーンでこそ味わえる映画鑑賞の醍醐味を、作り手側がまず守ろうという気持ちで行動に出なければならない」と指摘した。
映画振興委員会は、映画界の解決策を模索するため、3月から投資配給会社や製作会社、監督など、分野別に業界関係者らとの懇談会を開いている。早ければ今月、遅くも6月初めの発足を目標に「韓国映画産業危機克服のための協議体」を立ち上げる予定だ。
WOW!Korea提供