「コラム」康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.224「IUの表情が素晴らしかった」

是枝裕和監督作品の『ベイビー・ブローカー』は、第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選ばれて、主役のソン・ガンホが栄えある男優賞を受賞した。そんな彼と共演したIU(イ・ジウン)について語ってみよう。

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それぞれの配役

ソン・ガンホは、これまで韓国映画界で名作の主役を数多く務めてきたナンバーワンの俳優である。
そういう意味で、カンヌの男優賞の授賞は、彼のこれまでのキャリアに対する評価も加味されていた。
このように重鎮俳優が『ベイビー・ブローカー』を彩ったが、私が一番注目したのは、やはりIU(イ・ジウン)だった。
彼女は本当に印象的な演技を披露している。
『ベイビー・ブローカー』という映画は、子供をどうしても育てられない人が赤ん坊を預けるベイビー・ボックスが物語の始まりだった。このベイビー・ボックスに赤ん坊を置いてくる母親をIU(イ・ジウン)が演じた。
こうして、実際に赤ん坊を高く引き取ってくれる夫婦を探すために、様々な人が旅を続けていく。
怪しいブローカーに扮しているのがソン・ガンホで、その相棒になっているのがカン・ドンウォン。そして、ブローカーを追う刑事に扮しているのがペ・ドゥナとイ・ジュヨンだ。

彼女に没頭しすぎた

『ベイビー・ブローカー』では、実績ある俳優たちが「さすが!」という演技を披露しているが、スクリーンを見ていて別格ともいえる存在感を見せていたのが、赤ん坊の母親を演じるIU(イ・ジウン)である。
とにかく、各場面で彼女が見せる表情の一つひとつに釘付けになった。
それは、「ときには怒り、笑い、ふてくされ、優しくなる」という演技であったが、とても自然な気持ちで演じる役を受け止めることができた。
実際、あまりにIU(イ・ジウン)に没頭しすぎて、ストーリーの細かい部分を追えないほどであった。
それでいい。
この『ベイビー・ブローカー』は私にとって、IU(イ・ジウン)をじっくり見るための映画でもあった。
そして、予定どおり、その目的を達した。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

2022.07.16