俳優キム・レウォンはSBSドラマ「パンチ」で、先輩チョ・ジェヒョンと再び共演した。MBCドラマ「雪だるま」から10年ぶりとなる。2人は「パンチ」で敵対関係にあった。それでも相手が底に落ちることまでは望まない、最後の逆鱗には触れないような印象を漂わせた。
2人が苦しめあう姿は、男女関係の愛よりももっと深い兄弟愛のようだった。仲良く協力する関係ではなかったが、結局信じるのはお互いだけだったように感じられた。チョ・ジェヒョン演じるイ・テジュンと、キム・レウォン演じるパク・ジョンファンは、傷付け合っても死ぬまでは苦しめない“兄弟愛”を形成していた。
「『パンチ』の出演者同士は本当に仲が良かったです。演技に対する深い話もたくさんしました。先輩は言葉ではなく演技で見せてくれました。先輩と演技をしながら本当に多くのことを学びました。先輩は相手と息を合わせることが上手です。僕はただ先輩の演技についていっただけです。ジャージャー麺を食べるシーンを見ると、驚くことがあります。実はそのシーンは一緒に撮影したものではないんですよ。先輩とは別に撮影したんです。でも実際にその場で会話をしているように見えるでしょう。そういう演技の呼吸がすごいんです。」
前半で、テジュンが設置した防犯カメラを通じて一緒にジャージャー麺を食べるように会話をするシーンである。「パンチ」は終わった。そしてキム・レウォンはこのシーンをはじめとして「俳優は演技で全てを証明する」ことを見せてくれた。3年間、不振のトンネルを抜けたキム・レウォンは、このドラマで余命いくばくもない検事を演じながら、善と悪の境界を行き来し、演技人生の転換点を迎えた。もちろん初めからこんなにうまくできるとは思わなかった。「追跡者(チェイサー)」や「黄金の帝国」の脚本家パク・ギョンス氏は、人間の欲望を細かく扱うドラマを作ると定評があった。これまではトレンディーなドラマの男性主人公としての印象が強かったキム・レウォンが、このようなドラマをうまくやり遂げるのかについては疑問だった。
「ずいぶん悩みました。素晴らしい作品だけど、僕が映画『江南1970』で強いキャラクターを演じた後だし、準備期間もあまりなかったので。重たい役が『パンチ』でも続くのではないかと悩みました。初めの1~2話は“映画の演技”でした。映画とドラマでは演じ方に違いがあるんです。ドラマは視聴者が正確に理解できる表情や角度があります。だけど僕はこのドラマを初めて見た時、映画のようだと思って“映画の演技”をしました。映画の出演が長かったので、習慣になってしまっていることもあって、節制された演技でも十分にキャラクターを演じられるという確信もありました。」
キム・レウォンのような考えは「パンチ」のスタッフを不安にさせたのも事実である。どこか平凡で演技をしていないような感じ。あらゆる助言が注がれた。それでもキム・レウォンは自分の考える演技が正解だと思った。そして自分が信じるとおりにやり通したのだ。
「ドラマはカメラを見て演じなければなりません。でもそうしなくても人物が持っている感情を十分に見せられると確信していました。前半では『なぜ演じていないのか』と言う人も多かったですが、そういう人には信じてほしいとお願いしました。もちろんそう言いながらも、自信が揺らぐこともありました。本当に何も演じていないのではないか、と思いましたよ。たぶん僕が木や石のよう感じたんだと思います。でもその時もきちんと演技をしていました。こういう演技は伝わらないかもしれないけど、『江南1970』で演じながらユ・ハ監督の影響を受けたように思います。『パンチ』の5~6話を撮影した頃、監督に感謝のメールを送りました。」
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