「インタビュー前編」キム・レウォン、ドラマ「パンチ」は名セリフが多く魅力的な作品

klw-1※ドラマのネタバレになる内容が含まれています。

韓国で2月に終了したSBSドラマ「パンチ」で、キム・レウォンが演じたパク・ジョンファンは死ぬ瞬間、明るく笑った。チョ・ジェヒョン演じるイ・テジュンのファッション感覚を指摘する冗談。たとえ死に物狂いで闘っても、一時は同じ船に乗った同志としてテジュンに対する愛情が残っていた。死ぬ前にテジュンと焼酎を飲む。冗談を言いながら笑わせるこのシーンは、多くの名セリフを生んだ「パンチ」でも最高のものだといえる。

「パンチ」は台本が遅れたということもあったが、何より脚本家のパク・ギョンス氏が俳優を信じていたはずであり、後半の方では、前半と違って細かいト書きなどはなかった。このシーンでも“笑う”という注文はなかったという。キム・レウォンは「パンチ」でいつにも増して明るく笑いながら未練なく旅立っていくジョンファンの険しかった最後を代弁したのだ。子役キム・ジヨンが演じた娘パク・イェリンが生きていく世の中は、今よりはもう少しよくなることを願う気持ち。死ぬ直前まで行なっていたテジュンら巨悪な者たちとの争いは息が詰まるほど熾烈なものだった。自分のすべきことを全て終えたジョンファンが死すらもまぶしいくらいに幸せなこのシーンは、多くの視聴者の涙を誘った。

ジョンファンは余命いくばくもない若者だった。成功のために他人を踏みつけることができる正義とはかけ離れた検事。しかし死に近づきながら汚い世の中と闘わなければならないことが起きた。正義を具現することよりは家族を守るために奮闘する側に近かった。一日が違うように命綱を離すようになるジョンファンは、回が進むほどどんどんやせこけていくキム・レウォンの外面的変化によってさらに実感がわいた。

「映画に出演する前に15kgやせて、その後ドラマを撮影しながら5kgやせましたね。今は71kgです。僕は食べることが好きなので、作品に出演する時は意図的に体重を調節するんです。やせたら病んでいるようにみえると思ってやせました。だけど後からは疲れがたまって、病気にしてもひどくなりすぎてしまいました。だから後半からは食べるようにしていきました。でもその時はご飯を3杯食べても眠れないから、やせていったんです。本当に最後の1か月は顔を洗うのも3日に1回ぐらいでした。髪の毛も洗って手入れする時間がなくてそのままだったり…ジョンファンの出演分がものすごく多くて時間がさらになかったんです。」

「パンチ」は制作チームを3つにするほど後半では切羽詰った撮影が続いた。ベテラン俳優がずらっと並ぶゆえにNGなく撮影が進んでいても、いつも時間に追われていた。とにかく台本がおもしろかったが、それでも後半に入ると、台本ができあがるのが遅かったので撮影条件はよくなかった。戦争のような切羽詰った状況で進められた撮影は、最終回に放送事故を起こすという大きな汚点を残した。

「台本が遅かったのは本当に残念でしたね。この後どうなるかがわからずに演じながら、撮影が進んでいくので、人物の行動とドラマの全体的な絵を研究する時間が少なかったです。最終回で僕が倒れるシーンがありましたが、終わってからあの時僕が笑ったらどうだろうかと思いました。ジョンファンは死を前にしても冷静な人物だから、あのような姿を見せたらいいのではないかと。ある時はセリフも覚えられずに演じていたので、振り返ると演技としては微妙な失敗が見えてきました。もう少し力を入れてもよかったんじゃないか、もう少し力を抜いたほうがよかったんじゃないかとか。台本を分析する時間があまりなかったというのは本当に残念でした。」

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キム・レウォンは演技において完ぺき主義者だ。「パンチ」の台本練習と、映画「江南1970」の撮影と重なった。もしかしたらキャラクターが重なって見えるのではないかと心配し、相当の努力をした。

「もしかしたら『パンチ』のジョンファンが『江南1970』のヨンギのようなチンピラに見えるのではないかと心配しました。賢くてしゃべるのも速くて、明確にする人物だから真面目に見えなければならないと思いました。ジョンファンが病気で苦しむ時、みんなはいいと言ってくれても、僕は満足できないこともありました。ジョンファンの悪い部分があるが、許される理由が苦痛と母親に対する愛だと思いました。だからもっと苦しみ、そして母親と話すときは悪くないように見せようとしました。」

キム・レウォンは「パンチ」に没入して過ごした。恐ろしいほどに執拗にジョンファンという人物として過ごした。放送事故があった最終回が放送されている時、キム・レウォンは「パンチ」のメンバーとサムギョプサルを食べながら放送を見ていた。所属事務所の社長と電話で「パンチ」の演技について話していたため、放送事故の部分を見ることができなかったという。

「本当に名セリフが多かったです。表現できないくらいに魅力的でした。俳優として初めにセリフを見たら、これをどう演じなければならないか、どうやって口にしなければならないか心配します。簡単ではありませんでした。脚本家の先生は最後の何週間はほとんど眠れなかったと思います。苦労が多かったでしょうね。作品の途中で電話を差し上げたことがありました。この後どうなるのか気になって、どう演じたらいいか質問しようと思ったんです。先生は『いい演技だ』と言ってくださったのでうれしかったです。最後は手紙もいただきました。その中の『ジョンファンはレウォンさんが作った人物だ』という言葉は本当にうれしかったですね。」

「パンチ」は19話で企画されていた。普通のドラマは16話もしくは20話で企画されるが、「パンチ」は19話で終えるつもりで始めた。ジョンファンは死んだが、ジョンファンと対立していた悪い人物たちが没落したり、反省したりしながら少しは世の中が良くなるという期待を含めて終えるようにした。キム・レウォンに結末に対する満足度を尋ねた。

「ストーリーについては僕の領域ではないと思っています。僕は、パク・ギョンス先生の作品で人物を演じるだけですから。残念だと思う部分はありません。ただ19話なので後半に少しダレた部分があったと思います。今でも満足していますが、あえて上げるなら話数がもう少し短かったらよかったのではないかと思います。16話で終えていたらよかったかも。後半はパク・ヒョックォンさんが本当にうまくされていて、パクさんが演じるチョ・ガンジェのストーリーが面白かったです。本当にありがたく思っています。またいつこのような役をできるかわかりません。」

「インタビュー後編」はこちら

2015.04.19