「コラム」日本と韓国の物語「第9回/ 李秀賢(後編)」

李秀賢さんと関根史郎さんを顕彰するプレートが今もJR新大久保駅に設置されている

自分の命と引き換えにして
母親の辛閠賛(シン・ユンチャン)さんはこう語った。
「私は息子にいつも言っていました。どこへ行っても必要な人間になり、自分より困っている人がいれば助けてあげろ、と。私は秀賢を見ながらいつも夢を見ていたんです。秀賢は一体どんな人間になっていくのか。どんなすばらしいことをやってくれるのか。そのすべてのことを秀賢はたった1回でやりとげてしまったんです。自分の命と引き換えにして。何回生まれても普通の人間ができないことを、息子はたった1回の短い人生でやりとげてしまったのです」
その言葉は、最愛の息子をなくした母の鎮魂の叫びとして私の胸に迫った。
それから6年後の2007年1月26日、天皇・皇后両陛下のご臨席をたまわり、都内で映画『あなたを忘れない』の特別試写会が行なわれた。私が2001年に書いた『あなたを忘れない』も原作の一つになっていて、招かれて特別試写会に出席した。
その際に、私は久しぶりに李秀賢さんのご両親に再会した。よく覚えてくれていて、私にもしきりに礼を述べておられた。すばらしい人柄の両親だ。

この両親が発案して設立されたのがエルエスエイチアジア奨学会である。今も、アジア各国から日本に来ている留学生を支援している。
韓国と日本の架け橋になろうという夢を持った李秀賢さんの志は、様々な形で日本に受け継がれている。

文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ヨブル

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2021.12.10