韓国ドラマは概して回数が多い。日本のドラマは10回完結が多いが、韓国のドラマは短くても16回で、50回前後のドラマがザラにある。なぜ、これほど回数が長いドラマをたくさん作れるのか。それは、ストーリーの中に「対立」が随所に散りばめられているからである。
「対立」と「和解」
韓国ドラマでたまに見かけるのが、女性同士が髪を引っ張りあって大喧嘩する場面だ。日本のドラマでは見られないだけに、最初に見たときは本当に驚いた。
しかし、何度も見ていると、「驚き」よりも「あそこまで争うエネルギーの秘訣」が知りたくなる。
体面を保つための争いは、かくも壮絶なのである。
そういう場面は極端としても、韓国ドラマには様々な対立が現れてくる。
息子を溺愛する姑と、その息子と結婚した嫁の対立。
人生の成功に対する価値観が違う兄弟同士の対立。
1人の異性の愛を奪い合う友人たちの対立。
仕事のうえでプライドをぶつけあう同僚同士の対立。
このような対立をドラマは執拗に描いていく。
つまり、登場人物たちの対立軸を明確にするのが韓国ドラマなのである。
さらに、韓国ドラマが成立するためにかならず必要なのが悪役だ。
その存在が重要な役回りとなる。
とはいえ、悪役をただ単純に性格が悪すぎるという具合に扱わず、「境遇や立場によって悪くならざるをえなかった」というふうに描く。
このように、韓国ドラマは明確な対立軸の中で、そうならざるをえなかった悪役を主人公の対極に位置させて展開されていく。
だからこそ、韓国のドラマはあれほど長い話数を続けられるのだ。
そうしたドラマは現代の韓国社会の縮図でもある。ドラマが対立を描くのは、実生活でも随所で対立が起こっているからなのだ。
その原因になっているのは、「自分が言いたいことをかならず言う」という人たちが多いことだ。そういう人たちには「言いたいことを我慢して穏便にすませる」という考えがない。対立をおそれず自分を主張する……その結果として、みんなが対人関係で粘り強くなっていく。
同時に、対立は人間の奥に潜む感情まであぶりだす。その感情の発露もまたドラマチックだ。
韓国の人たちがあれほど人間味にあふれているのは、実生活の中で「対立」と「和解」を何度も繰り返しているからに違いない。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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