韓国では政治的な発言をする芸能人が少なくない。そうした世相の中で、2008年から9年間続いた強圧的な保守政権は、政府に批判的な姿勢を示した文化人と芸能人をリストアップして圧力をかけようとした。これが「ブラックリスト事件」だった。
82人が指名された
2008年2月から5年間にわたった李明博(イ・ミョンバク)政権では、政府に批判的な文化人・芸能人をリストアップしていた。
その後の朴槿恵(パク・クネ)政権でも同様にブラックリストを作っていた。
結局、ブラックリストに名前が載っていた人は合計で82人。内訳は文化人6人、映画監督52人、放送人8人、歌手8人、俳優8人となっていた。
このように映画監督の人数が突出しているのは、保守政権に批判的な人が多かったからだ。
ブラックリストに載った82人は、ただ名前がリストアップされただけでなく、その活動に対して政権から様々な形で圧力を受けていた。たとえば、助成金を削られたり、テレビ出演を妨害されたり……。
その圧力の中身は各人によって異なるが、こうむった被害は大きい。
たとえば、イ・ジュンギ。
彼は李明博政権を批判するデモが起きたとき、自らの信条にしたがってデモを擁護する発言を行なった。
そのことによってイ・ジュンギはブラックリストに名前が記載された。彼は兵役の延期が認められず、次の主演作品が決まっていたにもかかわらず、強制的に兵役に入らされた。明らかに政権から不当な扱いを受けたのだ。
他にも影響を受けた芸能人が多い。
その筆頭がキム・ギュリだ。彼女もデモが起こったとき、李明博政権を批判する発言をしている。
その結果、彼女は女優としての活動が大幅に減った。
それも政府の圧力が原因だった。
仕方なく、キム・ギュリはダンス番組のMCやバラエティに活路を見いだすしかなかった。まさに「回復できない傷を負った」のである。
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