朝鮮王朝を舞台にした韓国時代劇で、一番登場する機会が多い人物は誰でしょうか。
それは、歴代の王です。なにしろ、韓国時代劇では歴代の王を描かなければドラマが成り立たないほどなのです。
なぜ、歴代の王は韓国時代劇で主役になれるのでしょうか。
それは、「朝鮮王朝実録」を通して往時の言動のあらかたが把握できるからです。即位から亡くなるまで、王は毎日の行動と発言を側近たちによって記録され続けました。
それだけに、歴代の王の人物像は史料を読みこめば今でも手に取るようにわかります。時代劇をつくる側にとって、これほどありがたい人たちはいないでしょう。
ちなみに、「朝鮮王朝実録」というのは、歴代王の事績を記録した編年体の正史です。王が亡くなったあとに編集が始められ、王に仕えた記録官の記述をもとに作成されました。その文章量は膨大で、ハングルに翻訳(原文は漢文)されたものを1日100ページ読んでも、読破するのに4年以上もかかると言われています。それだけ王の言動が詳しく載っているのです。
この「朝鮮王朝実録」を読めば、どの時代にどんな出来事があって、それに対して王がどう語ったかがわかります。韓国の時代劇で王が重要な役割を担っているのは、「朝鮮王朝実録」を参考にして史実に沿った制作ができるからなのです。まさに、韓国時代劇のネタ本は何をさしおいても「朝鮮王朝実録」ということになるでしょう。
その「朝鮮王朝実録」の記述を通して韓国時代劇に登場する重要な人物について解説していくのが、この講演の目的です。
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