超新星のリーダー、ユナクが単独初主演を果たした日本映画「無花果の森」(6月14日公開)の公開に先駆け、4月に来日し、プロモーションを展開。4月9日、都内で行われた完成披露試写会イベントではファンと触れ合い、翌10日には各メディアの取材に応じ、映画の魅力をたっぷりPRした。
本作は、直木賞作家の小池真理子氏が、平成23年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した同名小説を映画化したラブストーリー。世界的指揮者の夫からDVを受け、夫から逃げる新谷泉(原田夏希)、パパラッチとしてそのDV疑惑を追っていたが、ある事件に巻き込まれ、警察に追われる身となるキム・ヨンホ(ユナク)が偶然に再会し、次第に心を通わせていく、切なくも甘美な物語。
ユナクはこれまで見せたことのないハードなラブシーンなどにも果敢に挑戦し、俳優として新たな魅力を放っている。
それだけに、多くの方に観てもらいたいという思いで、朝からずっと取材を受けてきたというユナク。もうすでにすっかり日も暮れ、この日最後の取材ということだったが、こちらが驚くぐらい、元気よくインタビュールームに入ってきた。場の雰囲気もパッと明るくなり、席に着いたユナクは「こうしてたくさんの媒体に取材をしていただけるのは、ありがたいことです」と笑顔を見せ、作品について、ユーモアを交えながらも真摯に、とても饒舌に語ってくれた。
Q試写会の舞台あいさつでは、まだ完成した作品を観ていないとおっしゃっていましたが、その後映画はご覧になりましたか?
ハイ。舞台あいさつのイベントが終わってから、お客さんと一緒に観ました。意外なところでみんな笑っていたので、なんでだろうって(笑)。僕が包丁を持って立っているシーン(泉の幻覚シーンで登場)は僕も笑いましたね。ただ、あのシーンは監督が何を狙ったのか、いまだに分からないです(笑)。現場でも、「なんでこのシーンが必要なんですか?」と聞いたんですが、「一番僕がこだわっているところだから」と言われて。夏希さんとかにも聞いてみたんですけど、「分からない」って。結局、全員が分からないと言っていました(笑)。監督は、「これ何だと思う?」と疑問を持たせるのが、好きらしいです。最後の終わり方も監督の狙いだって、昨日聞いたんですけど。やっぱり、分かりませんでした(笑)。
Q現場では、監督と意見がぶつかるということはなかったんですか?
最初から信じていたので、ぶつかるということはなかったです。ただ、包丁のシーンはみんな???でしたけど(笑)。
Q今回は初の単独主演ということで、エンディングロールでも最初にご自分の名前が出ますよね。
実は映画が終わった瞬間、席を立ったので見てないんですよ。たぶん、名前を見ていたら、感動して泣いたんじゃないかな。次も舞台あいさつがあるのに、涙でメークがぐちゃぐちゃになっていたと思うので、見なくてよかったです(笑)。
Q初の単独主演はいかがでしたか?
メンバーと離れて、しかも日本の映画で主役をやらせてもらって、すごくうれしいという思いが一番だったんですが、次にすごくプレッシャーが襲ってきたというか。すごく悩み抜いて出演を決めた作品なので、メンバーにも原作の方にも監督にもガッカリさせたくない、という思いが強すぎて、すごく心配で、どうしようどうしようと思いましたね。
Q出演を悩んだということですが、最終的に出演しようと思った決め手は何だったんですか?
そうなんです。やっぱり内容が重すぎたので、できないなと思って。それで、その後修正された台本がきたんですけど、それでも事務所と僕的にはどうしようと思っていた時、ちょうどその頃、舞台に出演していたんですが、監督と制作チームの偉い方が僕と話したいということで、僕の現場まで来てくださって、いろいろ話したんですよ。そしたら、監督から「この役をぜひやってほしい」と言われ、「何が心配なの?」と聞かれたので、こういうことが悩みですと答えたら、「それであれば大丈夫だよ」と。「ただ原作がベストセラーになったのには理由があって、その世界観は壊したくない。『世界の中心で愛を叫ぶ』と原作の『無花果の森』の間ぐらいの作品にしようと思っているから、美しく撮るし、そんなに重くもない。でも、原作の世界観は崩さない。そういう映画を作るから、僕を信じて」って。そこまで言ってくださる方ならば、絶対大丈夫だなと思って、「やります」と言いました。その後、これまでの監督の作品を見たんですが、センスがすごいなと思って。逆に断らなくてよかったです。最初から見ていたら、悩むことなく、やりますって言っていたかもしれないですね(笑)。
Q今回は、監督への信頼から出演を決めたということなんですね。
完全にそうです。監督と会う直前まで、やらない方向で話がまとまっていたので。でも、やってよかったなと思います。
Q監督からの注文などはありましたか?
舞台が終わった後に打ち合わせをしたんですよ。監督はその舞台を見て、“この人ならキム・ヨンホの役はいける、大丈夫”と思ったらしいので、特に演技指導とかはなかったですね。役の感情の流れなどは撮影をする前に、全部説明をしてもらったし、監督の作品を2本見ていたので、監督が何にこだわっているのか分かったんですよ。何が撮りたいのかもだいたい分かったので、本当にやりやすかったです。
Q長回しで撮影をされる監督だったそうですが、いかがでしたか?
ほとんど長回しでしたね(笑)。最初はカット割りをしていたんですが、監督からいきなり呼ばれて、「ユナク、長回しの方がいい」って。やさしい声で「いい」って言うんですよ(笑)。夏希さんとの2人のシーンでも、リハーサルをしていたら、「これは長回しの方がいいから、最初から最後までやってほしい」と言われたので、「分かりました、頑張ります」と。昨日、完成したものを見ていて、長回しで撮った意味が分かりました。何を狙っていたのかが確実に分かりましたね。
Qセリフの量も多かったと思いますが、覚えるのに苦労されましたか?
覚えるのは大変ではなかったです。ただ、日本に来て10年以上経っている韓国人の記者という設定だったので、発音はちゃんとしたいなと思ったんです。でもやっぱり、僕も外国人だから、どんなに練習しても、限界はあるんですよね。「ず」とか「つ」とか、1文字だったら言えるんですけど、感情を込めて、演技をしながら言うと、やっぱりちょっとバレちゃうんですよ。そういう点が難しかったです。
Qセリフが長いことより、発音の方が難しかったと。
意外に「取材」の発音が難しいんです。自分では、“言えた!”と思ったのに、監督からちょっと違うと言われて、もう1度撮り直しになって、今度こそ“言えた!”と思ったら、また違うと言われて。「何が違うんですか!?」って(笑)。
Qユナクさんが演じたキム・ヨンホは、ご自身ではどういう人物だと思って演じましたか?
人と話をして記事を書きたいと気持ちがすごく強くて、ジャーナリストを夢見ていた人なんですけど、外国人ということで日本語も上手くないし、チャンスもなくて、無視されて。出来ることといえば、記者でなくても出来るパパラッチぐらいという。すごく自信がない人なんですけど、夢は捨てられない。だから、上司から言われるままにパパラッチをしたり、芸能界の麻薬汚染疑惑を追ったり。それで、チャラい男になったりするんですよね。でも、夫からDVを受けている妻に興味を持って、一人で燃えてしまうという面白い設定です。それで、僕の周りにも記者の仕事をしている人たちがけっこういるので、いろいろ話を聞いたら、「他人の悩みとか生活とか、うれしいこととかを聞く立場で、自分のことは何も話せないから、すごくさびしいし、存在感がないよ」って。でも、それなりにやりがいはあると言っていましたね。記者って、ペンの力だけで人を動かせるじゃないですか。そういう能力を持っている人って、さびしいんですよね。バットマンでもスパイダーマンでも、能力を持っている人ってみんなさびしいですよね。映画でも、そういうさびしい部分が表現されていると思います。
Qある事件によって、追われる身となりましたが、徐々に気持ちが前向きに変化していきますよね。
彼女のおかげで、男になったということです。自分に置き換えると、軍隊に行ってきたという感覚に近いですね。最初はチャラい気持ちもあったと思うんですけど、彼女の魅力に落ちて、これは恋だなって気づいたじゃないですか。だから、ある決断をするんですけど、それはすごく勇気のある判断だったと思います。本当に大人になったという感じだと思いますね。
Q共演した原田夏希さんの印象は?
泉という役とけっこう似てるんじゃないかと思います。最初の印象から、けっこうさびしい目をしている人だなって感じていたんですよ。普段は明るくて、僕に対しても「ご飯食べた?」とか気にしてくれたり、けっこう楽に接してくれたんですけど、目だけを見ると、すごく深くて悲しそうで、いろんな事情を抱えているような(笑)。演技者として、すごくいい目を持っているんじゃないかなって。もちろん芝居もうまいし、10年のキャリアを感じさせる、すごい女優さんだと思いました。
Q今回の映画は、台本の順番に撮影をしていったんですか?
全部ではないですけど、ほとんどそうですね。監督が配慮してくださったので。キスシーンは最後にしてもらいました。最初からキスシーンなんて、僕には絶対できないので(笑)。この前、韓国の映画を撮ったんですけど、最初からキスシーンがあったんですよ。相手役の方とまだ仲良くなっていないのに。なので、監督に直接電話をして、最後にしてもらったんです。自分自身も納得できない演技はしたくないし、最初からキスシーンなんて、ありえないですね(笑)。
Q映画の中で好きなシーンを挙げるとすると?
泉さんと電話するシーン。自分が追われているということを泉さんに告白した後、自信もなくて、自分からは電話しにくかったんですよね。だから、彼女から電話がきて、“きたな!”って。そこには、いろんな意味があるんですよ。照明にもこだわっていて、夏希さんは青、僕は黄色の照明を使っているんです。それから、電話をするとき、夏希さんは目線を下、僕は目線を上にして話しているんです。最初監督から、「ユナク、ここは目線を上にして芝居してくれない?」って言われたとき、「電話するとき、誰が上を見てしゃべるんですか?」って聞いたんですよ。そしたら、「ロミオとジュリエット」のような感じにしたかったって。それで僕は空を見ながら電話をしているんですけど、このシーンがきっかけで、いろいろ展開が変わるんですよね。
Qおかまバーでのシーンでは「恋におちて」も歌っていましたね。
ハハハ。ビックリしました。不倫の曲ですよね。最初聞いたときは、女性の曲だから、どうしようと思って。でも、「キーは高くないから大丈夫だよ」って言われて。歌ってみて、いい曲だと思いました。
Qさすがにコンサートでこの曲を歌うことはないですよね?
ないです! でも、40歳を過ぎて、成人だけのコンサートをやったら歌うかもしれない。「昔歌った曲を思い出しながら、歌います!」って(笑)。
Q映画撮影は、待ち時間も長いと思いますが。
待ち時間はほとんどなかったです。すごくタイトなスケジュールの中での撮影だったので、すぐにセットチェンジをして、次のシーンを撮影していたので。逆に休みをくださいって感じでした(笑)。
Q撮影の合間のエピソードというと。
完成披露試写会で夏希さんも言っていましたが、河口湖でのロケのとき、ボートがいっぱい見えたので、韓国では“アヒルボート”が当たり前だから同じだと思って、「アヒルボートいっぱいあるじゃん」って言ったら、「白鳥ボートですよ」って。周りのスタッフが笑っていましたけど、文化の違いですね(笑)。
Qファンにはラブシーンも演じたことに対し、「許してください」とおっしゃっていましたが、完成した作品を見て、今改めてファンには何と言いたいですか?
俳優としてのユナクを見てほしいし、僕がこの世界でいろんなジャンルの仕事をしたいと思うのは当たり前のことなので、僕ユナクを好きになってくれたファンの方は理解してくれると思うし、「もっと頑張ってね」って応援してくれると信じています。(甘い声で)信じてま~す!
Q今回は事件に巻き込まれて逃げるという設定でしたが、ユナクさん自身、今まで逃げたいと思うことはありましたか?
ありましたよ、今この瞬間も(笑)。それは冗談ですけど。でも、どうですかね、僕仕事に関しては、「何で1日に、こんなにたくさん仕事を入れるの?」とかすごくうるさく言いますけど、やっぱり仕事が大好きなんですよ。1日でも休みがあると落ち着かなくて、「明日何かない?」ってマネジャーに電話したりして。自分ではあまり意識していなかったんですけど、周りの人たちからは「仕事中毒だね」って。この前も、久しぶりに休みをいただいたんですが、1日休んだらすごく不安になって、事務所に行っちゃったんですよ(笑)。それで、3時間ぐらい超新星の写真をチェックしたりして。そういう自分を客観的に見て、ダメだなって(笑)。だから仕事に関しては1回も逃げたことがないんですよね。ハードスケジュールもすごく楽しくやっています。
Q仕事への責任感が強いんですね。
僕の下に5人いるから、ガッカリさせたくないという気持ちがすごく強いんです。最近、僕一人でいろいろ仕事をしているので、メンバーには悪いなって思いつつも、分かってくれていると思うから、大丈夫かなっていう気持ちもあって。だから、しっかり仕事をして、みんなが誇りに思えるお兄ちゃんになろう、っていうか、なるしかないじゃないですか。だから、毎回仕事をするときは全力でやっています。
Q今後、演じてみたい役はありますか?
これからがスタートなので、やりたいことはいっぱいありますが、ユナクというと昔から“マジメ”“真剣で静かな芝居”という印象を持たれているんですよ。けっこう、彼女のために命を懸ける男の役とかが多くて。この前の映画でも、チンピラ役だったので、「よし!」と思ったら、また無口で彼女を命懸けで守るという設定だったんです(笑)。次は楽しくて愛嬌がたっぷりあって、面白い、個性のある役がいいですね。主演じゃなくてもいいので、3分だけの出演でもいいから、インパクトのある役を演じてみたいです。
Qユナクさんは映画をご覧になるのもお好きとか。おすすめの韓国映画と日本映画を挙げるとしたら?
韓国映画では、ちょっと昔の作品ですけど、ファン・ジョンミンさんとチョン・ドヨンさんが出演された「ユア・マイ・サンシャイン」。あの2人でなければできなかった映画だと思うので、韓国にもこんなに素晴らしい俳優がいるということを多くの方に知ってもらいたいと思うし、もちろんストーリーもいいです。日本の映画では、韓国の人に見てほしいなという意味でおすすめしたいのは「テルマエ・ロマエ」。DVDで見たんですけど、めっちゃ面白いですね。だから、「テルマエ・ロマエII」は映画館で見ようと思っています。
Q最後に、これから映画「無花果の森」を見る方に一言メッセージをお願いします。
この映画は、原作を読んだ方はお分かりだと思いますが、すごく深い意味が込められています。特に、女性にこの映画を絶対見てほしいなと思うのは、泉さんの感情の変化とか、いろんなことが変わっていくんですが、そういうことって誰にでも経験があると思うんですね。テーマは重いですけど、恋愛の展開は絶対面白いと思うし、「あー、そういうことあるある」「私でもああいう選択をするな」って共感しながら、ワクワクして見られる映画です。原作も素晴らしいし、監督も素晴らしいので、それを信じて、ぜひご覧になってほしいなと思います!
作品について熱く語り尽くし、最後のインタビューが終わったからか、充実した表情を浮かべるユナクに、「では次、写真撮影をお願いします」と告げると、「なるほど、終わってなかったんですね」と苦笑いしつつも、カメラを向けると、シャッターを切るたびに、次々とポーズを変え、さまざまな表情を見せてくれた。
今回、いろいろなプレッシャーを背負いながらも、監督に絶対的信頼を寄せ、俳優として新たな挑戦に挑んだユナク。「無花果の森」を通じて、一回りも二回りも成長したのだなということが、自信に満ちあふれた表情で話す姿から見てとれた。ユナクが好きなシーンや監督がこだわったシーンなどにも注目しながら、彼の魅力をぜひスクリーンで体感してほしい!
6月14日(土)シネマート新宿ほか全国順次ロードショー!
インタビュー:Korepo(KOREAREPORT INC)
<衣装>
・スタイリスト/横田勝広&米村和晃(共にYKP)
・ブランド/Roen http://www.roen.jp/
・ブランド問い合わせ先/Roen Showroom ☎03-6277-8937
・住所/〒106-0032 東京都港区六本木4-1-4 黒崎ビル3F
「無花果の森」
【ストーリー】
超新星ユナク・日本映画初主演。絶望の闇におちた男女が織りなす、深く切なく甘美なラブストーリー。「君のことを守りたい」彼の言葉が彼女の心に光を射した。
日本に留学し、ジャーナリストを目指すも、今では雑誌社のパパラッチとして働いている韓国人青年ヨンホ(ユナク)。彼は世界的有名指揮者、新谷吉彦(三浦誠己)の妻・泉(原田夏希)への DV 疑惑を追っていた。そして、そのことを知られた彼女は、全てを捨て、ある町に身を隠し、偏屈で通る老女性画家・天坊八重子(江波杏子)の住込み家政婦となった。しかし、ある日、ヨンホと泉は偶然にも再会する。しかも、再会した時のヨンホは、警察に追われていた。追われるヨンホと逃げる泉。二人は次第に心を寄せ合うようになるが…。
出演:ユナク(超新星)、原田夏希、三浦誠己、徳井優、木下ほうか、MiNo、瀬戸早妃、かでなれおん、名高達男、江波杏子
プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ 監督:古厩智之
原作:小池真理子「無花果の森」(平成23年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞)(日本経済新聞社・刊)主題歌:「ジュエリーボックス」MiNo
特別協賛: VanaH(株) 製作:(株)アタデューラ 配給:BS-TBS
オフィシャルHP:http://www.bs-tbs.co.jp/ichijiku/
©2014『無花果の森』製作委員会
2014年/日本映画/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/108分
6月14日(土)シネマート新宿ほか全国順次ロードショー!