第32回 正室として夫を支えた王妃
元敬(ウォンギョン)王后は、初代王・李成桂(イ・ソンゲ)の五男である芳遠(バンウォン)の妻で、夫を王にするために大きな働きをした女性だ。しかし、そんな彼女の人生は幸せなものではなかった。
朝鮮王朝一の功労者
1365年に高麗王朝の名門の家に生まれた元敬王后。彼女は、1382年に李成桂の五男である芳遠と結婚するが、それは朝鮮王朝建国のために有力な後援者を探していた李成桂が進めた政略結婚だった。
2人の夫婦仲は良く、力を合わせて朝鮮王朝の創設に尽力した。その甲斐あって1392年に朝鮮王朝が建国された。以降、芳遠は王の後継者となるために血のにじむような努力を重ねていく。
夫を王にしようと惜しまず協力した元敬王后。彼女は、政敵の急襲を芳遠に知らせたり、用意しておいた武器を渡してクーデターを成功に導いたりした。元敬王后ほど、夫を王にするために大きな働きをした王妃は他にいない。「内助の功」で言えば元敬王后が一番の功労者だった。
1400年に芳遠は3代王・太宗(テジョン)となり、元敬王后は王妃となった。しかし、2人の夫婦仲は、それまでの仲の良さが嘘のように冷え切ってしまう。このとき、太宗には12人の側室がいた。彼は側室のもとにばかり通うようになり、元敬王后を敬遠し始めたのである。そのことに耐えられなかった元敬王后は太宗を批判した。
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