
日本発の人気キャラクター「ちいかわ」が、韓国の映画館で大きな存在感を示している。劇場版の観客動員数は234万人を突破し、興行ランキングで首位を維持。熱心なファンだけでなく、作品をよく知らなかった一般の観客にも人気が広がっている。
かわいらしいキャラクターたちが登場する一方で、物語には厳しい現実や思い通りにならない日常が描かれる。その意外な組み合わせが、韓国の若い世代を中心に共感を集めているという。映画のヒットを支える作品の魅力と、韓国で広がるファン文化に注目した。
■観客234万人突破、韓国で日本アニメのヒット作に
韓国映画振興委員会の映画館入場券統合電算網によると、「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」は10月28日時点で累計観客数約234万人を記録。同日の興行ランキングでも1位となり、新作映画「ハート・オブ・ビースト」や「修能、出題の秘密」が公開される中でも首位を守った。
公開10日目には観客100万人、25日目には200万人を突破。「THE FIRST SLAM DUNK」が韓国で200万人に到達した公開29日目を上回るペースで、「劇場版『チェンソーマン レゼ篇』」の公開24日目に近い勢いを見せた。
2026年に韓国で公開されたアニメーション映画の興行成績では「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」を抜いて2位に浮上。日本アニメーション映画の韓国歴代興行ランキングでも「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」を上回り、トップ8に入った。
韓国の映画館チェーンCGVの関係者は、韓国メディア「ヘラルドミューズ」の取材に対し、かわいいキャラクターと対照的な緊張感のある物語、そして厚いファン層がヒットの背景にあると分析した。ぬいぐるみを持参して映画を鑑賞したり、記念写真を撮影したりするファンの楽しみ方に、グッズの人気やSNSでの口コミが加わり、リピート鑑賞とロングランヒットにつながっているという。

■かわいさの裏にある厳しい現実、大人たちが共感する理由
「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」は、報酬100倍という誘いを受け、未知の島へ向かったちいかわたちが、そこに隠された秘密に迫る物語。原作者のナガノ氏が描いた長編エピソード「セイレーン編」を原作とし、ナガノ氏自身も脚本を手がけ、作画や絵コンテにも意見を伝えるなど、制作に深く関わった。
ナガノ氏は、美しい背景や映画ならではの構図、映像のテンポを劇場版の魅力として挙げている。セイレーンの登場場面やうさぎのラップ、躍動感のある戦闘シーンなどにも注目してほしいと語っており、原作では表現しきれなかったラッコの強さも見どころの1つだという。
韓国では、こうしたアクションやうさぎのラップも好評で、ラップの場面はSNSのチャレンジ動画として広がっている。CGVの観客評価指標「ゴールデンエッグ指数」は93%、NAVERの評価は10点満点中8.3点を記録した。
一方、韓国で特に注目されているのが、20~30代の女性を中心とする大人のファン層だ。「ちいかわ」の魅力は、キャラクターの愛らしさだけではない。そこには、現代人の生活と重なる厳しい現実が描かれている。
ちいかわと仲間たちは、草むしりや危険な討伐などの仕事をこなし、報酬を得て生活している。よりよい仕事や高い報酬を目指して資格試験に挑戦するものの、努力が必ず報われるわけではなく、失敗することもある。その姿は、就職活動や仕事のストレス、将来への不安を抱える現代の若者たちの姿と重なる。
さらに、突然怪物が現れるなど、思いがけない危険が待ち受ける世界でも、ちいかわたちはお互いに助け合い、食べ物を分け合いながら小さな幸せを見つけていく。厳しい環境だからこそ、仲間との友情やささやかな喜びが、より温かく感じられるのだ。
韓国では、かわいいキャラクターと過酷な世界観の組み合わせが「残酷童話」とも呼ばれ、口コミで広がっている。物語に隠された意味や解釈を掘り下げるコンテンツも登場し、作品をよく知らなかった観客の関心まで引き付けている。
単なる子ども向けアニメーションではなく、大人も深く感情移入できる作品として評価されていることが、幅広い観客層を引き付ける理由の1つといえそうだ。
韓国でのヒットを語る上で欠かせないのが、ファンの鑑賞スタイルだ。ちいかわのぬいぐるみを持って映画館を訪れ、記念写真をSNSに投稿することが流行。入場者特典のグッズを集めるため、何度も映画を鑑賞するファンも増えている。
舞台あいさつのチケットは短時間で全席完売。こうした人気を受け、CGVは4DX上映も決定した。映画の場面に合わせて動く座席や特殊効果を通じて、ちいかわたちの冒険をより臨場感のある形で楽しめるようにした。
映画館の外でも、その人気は広がっている。韓国の音楽番組「M COUNTDOWN」には、ちいかわ、ハチワレ、うさぎ、そしてセイレーンが登場。映画のOST「The Island Song(島の歌)」を披露する特別ステージが実現した。
番組関係者によると、K-POPファンの間でも「ちいかわ」の人気が高まっていることから出演が決まったという。キャラクターのファンには新しい楽しみ方を、番組の視聴者にはアニメや映画に関心を持つきっかけを届けたいとの思いがあった。
さらに、人気はファッションや美容、スポーツなどの分野にも広がり、関連商品への関心も高まっている。劇場版のヒットをきっかけに、「ちいかわ」は韓国で映画の枠を超えた存在となりつつある。
かわいい見た目に引かれて作品に触れた観客が、その奥にある厳しい現実や仲間との絆に共感する。そして、映画を繰り返し鑑賞し、グッズやSNSを通じて楽しみを共有する。こうした広がりが、韓国での「ちいかわ」人気を支えている。
韓国で観客301万人を動員した「ハウルの動く城」の記録を超えられるのか。熱心なファンの支持から一般の観客へと広がった「ちいかわ」の勢いが、今後どこまで続くのか注目される。
WOW!Korea提供








