ファン・ジョンウムが主演する『サンガプ屋台』は、女店主と仲間たちがお客さんの夢の中に入って、その人の恨みを晴らすというファンタジーなカウンセリングドラマである。痛快な面白さがある。
生きていくための教訓がたっぷり
観た後にスカッと爽快な気持ちになれるドラマを韓国ではサイダードラマという。『サンガプ屋台』もまさにそんな作品だ。
本作は2020年に韓国JTBCで放送されたドラマで、ラブコメクイーンの異名を誇るファン・ジョンウムが主演している。
ソウルの一角に夜な夜な現れるサンガプ屋台という名の不思議な屋台。屋台には気難しい女主人ウォルジュ(ファン・ジョンウム)と雇われ店員クィ(チェ・ウォニョン)がいる。そこにアルバイト青年ガンベ(ユク・ソンジェ/BTOB)が加わりサンガプ屋台の顔ぶれが揃う。この三人は天界からの使者で、人々の悩みや恨みを晴らすという役割を与えられている。
サンガプ(双甲)という言葉を初めて聞いた。互いに対等であるという意味だそうだ。一般的に甲を強者、乙を弱者で表すことが多いが、サンガプは双方が甲、すなわちお互いに対等という意味になる。タイトルからして不思議なこのドラマ。ラブコメクイーンのファン・ジョンウムが主演ということに賭けて視聴してみたら予想以上におもしろかった。
どちらかというとファンタジー系は得意ではないという先入観がある。考えてみれば、大好きな『トッケビ』は究極のファンタジーだし、マイベスト10に入る『私の期限は49日』も死神が登場するファンタジーだった。韓国人の死生観や宗教観がよくわかるようなファンタジードラマは好みなのだと今更ながら気付いた。『サンガプ屋台』もまさにそうだ。大ヒット作でありながら好き嫌いが分かれた『トッケビ』と違って『サンガプ屋台』はとてもわかりやすい。
『サンガプ屋台』の女店主ウォルジュには10万人の恨みや悩みを晴らさなければならないという天界からのミッションがある。そのため、ウォルジュは屋台に来る人の悩み事を聞き出そうとするのだがなかなかうまくいかない。人の心が読めるという特異体質の青年ガンベを雇うことに成功したウォルジュはミッション遂行に向け奔走するが、そこにはウォルジュ自身も知らなかった多くの因縁が隠されていた。
屋台にはいろいろな人が訪れる。悔しい思いを持った人、時を戻したいと思っている人、中には死んでしまいたいと思っている人まで……。さまざま事情を抱えた人がやってくるが、蓋を開けてみると彼らの抱えている問題は当人が知らず知らずのうちに犯していた小さな罪が根源だったりする。
人は自分の言動や行動が誰かの人生に波紋を起こしていることに気付かずに過ごしてしまいがちだ。自分が蒔いた種は月日を経て良くも悪くも自分に帰ってくるのだと本作は気付かせてくれる。そんな因果応報の道理を一話完結のストーリーでわかりやすく見せてくれているのが本作のおもしろい点だ。生きていくための教訓がしっかり描かれているのも興味深い。
ユク・ソンジェとチェ・ウォニョンは2022年9月から11月に韓国MBCで放送された『ゴールデンスプーン』でも共演している。日本ではディズニープラスで配信中。この二人の共演を観るならNetflixで配信中の『サンガプ屋台』もオススメだ。
文=朋 道佳(とも みちか)
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